12月12日、国家安全保衛部特別軍事裁判での張成沢氏への死刑判決を伝える朝鮮労働党機関紙、労働新聞(労働新聞12月13日付紙面より)

12月12日、国家安全保衛部特別軍事裁判での張成沢氏への死刑判決を伝える朝鮮労働党機関紙、労働新聞(労働新聞12月13日付紙面より)

 

「張氏夫妻は以前から別居」との情報も

北朝鮮当局による張成沢(チャン・ソンテク)国防委副委員長の粛清後、国内では張氏の「罪状」を住民に徹底周知させる作業が続いている。一方、現地の住民は、妻で故金正日総書記の実妹である、金慶姫(キム・ギョンヒ)党軽工業部長の消息に強い関心を持っていることが、北朝鮮内部での取材で分かった。(ペク・チャンリョン)

◇「自白書」無条件で皆が提出 統制に不満
今回、電話で北朝鮮内部の様子を伝えてくれたのは、北部地域のとある国境都市に住む取材協力者(以下、協力者)。通話は18日に行われた。
記者:張成沢氏と彼の側近たちを粛清したことについて、住民たちはどう考えていますか?
協力者:考えの足りない人たちは「側近たちをみんな殺すつもりだろう」と単純ですが、賢い人達はそもそも政府の言うことを、そのまま額面通りに聞いていませんね。

記者:今回の事件と関連して「自白書」を出せという動きがあるようですが、これについての不満などは聞かれませんか。(編注:『自白書』とは、先日アジアプレスが報道した『反映文(反省文)』のこと。国営メディアを通じ発表された張成沢氏の「罪状」を自らに照らし合わせ、自己反省、自己批判を書き記す)
協力者:わざわざ不満を口にして死のうとでも?無条件で全員が提出していますよ。昨日(17日)の(金正日二周忌の)追悼行事も、機関ごとに参加人員を調査して、欠席した人について、その理由を明らかにするよう求めています。まったくイヤになります。どこの誰が、なぜ欠席したのか明らかにせよというのですが、以前はここまでははしませんでした。ますます(統制が)ひどくなりますね。

記者:幹部たちはどのような反応ですか?
協力者:皆、ひっそりと息を潜めています。お互いが互を警戒し、言葉も多く交わさず、特に「家系」、つまり張成沢と金慶姫に言及すること話さないよう注意しています。そうでなくとも、彼ら(張氏夫妻)について噂が多いですからね。

記者:当局は住民たちに対し、張成沢氏の罪についての講演や会議などを頻繁に開いていますか?
協力者:多いどころではありませんよ。保衛部(情報機関)から派遣された人物が講演を行っています。ひと言で「張成沢が我々を騙した」という内容なのですが、ある人たちは激怒し、「張成沢のせいで生活が苦しかったのか」と考えているようです。
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