京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

無毒化に100万年 これ以上核廃棄物「生産」すべきでない

経済産業省は、原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物を地中深くに埋めて廃棄する「地層処分」について、技術的な信頼性を再評価する作業部会 を進めている。はたして地層処分は核のゴミの好ましい処分方法と呼べるものなのか。京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに地層処分について聞いた。
(ラジオフォーラム)
◇70年経っても未だに無毒化する方法がみつからない

ラジオフォーラム(以下R):まず、この地層処分について小出さんはどのようにお考えですか。
小出:ウランという物質を核分裂させて原子力発電というものをやろうとしているわけですね。ウラン自体が放射性物質 で、もともと危険なものなのですが、ウランを核分裂させてしまいますと、その途端に放射能の強さが1億倍に増えてしまうのです。ですから、超危険物をつ くってしまうわけですね。

その危険物を何とか無毒化できないかと初めから思ってきましたし、今でもその方策を探っているわけですが、無毒化する方法は残念ながらまだ見つかっ ていません。70年近く研究を続けてきているわけですけれども、無毒化はできない。であるなら、どこかに隔離するしかない、ということになりました。

つまり人間や他の生命から隔離しようと、様々な方法が提案されてきました。例えば、宇宙に捨ててこようということがはじめ考えられましたけれども、 ロケットは時々、失敗して落っこちてくるので、これは無理だろうということになりました。それから、深い海の底に埋めてしまえば何とかなるのではないかと か、南極で捨ててしまえばいいのではないかとか、様々な方法が提案されたのです。しかし、もし失敗した場合、地球全体、あるいは南極が汚れてしまうという ことになります。地球、あるいは南極は原子力の恩恵を受けた国だけのものではないという観点から、それもすでに国際条約で禁じられました。

◇無毒化するまでに地震が1万回も発生
それでもう仕方がない、地中に埋めてしまおうということになって、地層処分という考え方が生まれました。現在、これしかないという形で残っている唯一の方策なのです。

R:小出さんはこの地層処分しかないというお考えですか。

小出:そんなことはありません。例えば、日本というこの国では安定した地層なんてないのです。世界一の地震国で あり、世界中で起きる大きな地震の1割か2割がこの日本で起きています。そして、日本で言われている地層処分というのは300メートルから1000メート ルの深い穴を掘ると言っているわけですけれども、地震というのは深さ何キロ、何十キロというところで発生するわけで、それが岩盤を割りながら地表面まで断 層を生み出すという、そういう現象なのです。

ですから、300メートル、1000メートルも深いと原子力を進めてきた人たちは言うわけですけれども、決してそんなことはないのです。おまけに、埋め捨てにしたところで、一体何年間そこに保管しておけばいいのかというと、100万年なのです。

R:100万年......。気の遠くなる年月ですね。

小出:例えば、東海地震はほぼ100年ごとに襲ってきているということがわかっています。100万年に東海地震 が何回起こるかというと、1万回も起こってしまうわけですね。それでもなおかつ安全だと言えるような場所は日本にはありませんし、そんなことを保証できる 科学はもともとないのです。私はそんなものは到底やってはいけないと思います。
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