イラン製SNS、GLOOBのロウハニ大統領のページ。ロウハニ大統領は最初の書き込みに、「世界の情報ネットワークと繋がる権利を、我々はこの国の市民権のひとつであると公認している。」とコメントした。

イラン製SNS、GLOOBのロウハニ大統領のページ。ロウハニ大統領は最初の書き込みに、「世界の情報ネットワークと繋がる権利を、我々はこの国の市民権のひとつであると公認している。」とコメントした。

 

◆イラン製SNSのCLOOB、会員は100万を越える

穏健派大統領の誕生で、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルネットワークが解禁間近と噂されるイランだが、最近その雲行きに微妙な変化が現れている。

社会的自由の拡大を公約に掲げて当選したロウハニ大統領にとって、フェイスブックとツイッターの国内解禁は、民主化への進展を計る一つの試金石と内外から見なされてきた。
2013年6月の当選から現在にかけて、大統領、副大統領、外務大臣を含む閣僚10名がすでにフェイスブックにアカウントを持ち、あたかも国内解禁の既成事実化が進められているかに見えた。

ところがここ数ヶ月、それと平行するかのように、国営、準国営メディアがさかんにイラン製SNSを取り上げ始めた。

イランには複数の国産SNSがあり、中でも10年前に設立されたCLOOBというSNSがだんとつの人気で、会員数はおよそ100万人を超える。 フェイスブックとほぼ同様の機能を持ち、過去には二度、当局のフィルタリングを受けたことがあるが、現在では国内法を遵守する「健全」な運営がなされてい るという。

このCLOOBに最近、政治家や芸能人が次々にアカウントを取得し始めたのだ。そしてそのたびに、国内メディアがニュースとして報じてきたが、去る 5月17日の「世界電気通信および情報社会の日」にちなみ、CLOOBにアカウントを取得した4人目の現政権の閣僚としてロウハニ大統領の名が報じられ た。多くの国営、準国営メディアとともに、独立系改革派新聞シャルグもこれを報じ、ロウハニ政権が国民とのより密接なつながりを求めていると報じた。フェ イスブックとツイッターの解禁はどうなったのかと問う声はない。

フェイスブックとツイッターのフィルタリングを決め、実行しているインターネット違法コンテンツ決定作業部会(以下、フィルタリング作業部会)のホ ラムアーバーディー事務局長は、メフル通信とのインタビューで、フェイスブックとツイッターのフィルタリングについて問われ、「ツイッターとフェイスブッ クの二つのソーシャルネットワークは断固としてフィルタリングする。なぜなら、この二つのSNSは犯罪的な内容を持ち、イランのイスラム共和制に敵意を 持っているからだ。こうしたサイトをフィルタリングすることは国民も望んでいる」と述べた。

このフィルタリング作業部会のメンバーは13人で、そのうち6人が情報大臣、情報通信技術大臣、教育大臣、イスラム文化指導大臣、法務大臣、科学技 術大臣、7人をイラン国営放送総裁、イスラム宣伝庁長官、治安維持軍(警察)長官、文化革命最高評議会会長、検察庁長官、および二人の国会議員によって構 成される。

同事務局長はまた、
「イランにはイラン製のSNSが存在し、多くのイラン人がそれを利用している。国の情報を国外のSNSに委ねるべきではない。フェイスブックの創設者の一 人はユダヤ系アメリカ人の若者で、最も影響力あるシオニスト4人の一人とされており、フェイスブックはCIAの情報機関の一つでもある」
と警戒感をあらわにした。

確かに、純粋に人と人とを結び付けることが目的ならば、SNSが必ずしもフェイスブックやツイッターである必要はない。だが、GLOOBのように完 全に政府の手の内にあるソーシャルメディアでは、イスラム法からはみ出す表現や言論は一切許されない。それが当局のねらいであることは明らかだ。

イラン国民の多くは、穏健派大統領が憲法の枠内で自由化を推し進めることを大方支持している。だがそれは、フェイスブックではなく現体制の枠内にあるイラン製SNSでよしとしてしまうことを、はたして意味しているのだろうか。

【大村一朗】

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