電力融通の必要すらない

R:なぜか今年は、東京電力から電力を分けてもらうそうです。

小出:まあ、そういう計画になっていますけれども、本当にそんなことをしなければいけなくなるのかどうか、私は疑問だと思っています。

R:「やっぱり原発ないと困るよね」という雰囲気をつくるためのから騒ぎの傾向がありそうですね。
それでも東電は黒字になるとのことですが。

小出:そのようです。まことにあきれた話だと思います。もし東京電力が福島第一原子力発電所の事故をきちんと精算する、あるいはその住民の方々に賠償するのであれば、東京電力なんて何十回倒産しても足りません。
現実には、そうしたツケを住民たちに負わせる、あるいは国に支払わせているのであって、東京電力は、本当であれば倒産させなければいけないのです。その会社が黒字だというのは、本当にあきれたというか。この国のひどい政治のあり方だと私は思います。
発電しない原発が存続する理由

R:ところで、稼動していない原発に基本料というものが支払われているそうですね。

小出:日本では、原子力発電所が1966年から動き始めたのですが、その当時は、どこの電力会社も独自に原発に手をつけることを怖がり、その代わりに、みんなで集まって日本原子力発電株式会社という会社をつくりました。

その会社が茨城県東海村の東海第1原子力発電所と福井県の敦賀に敦賀第1、第2という原子力発電所を作ってきたわけですけれども、これらは今みんな 止まっています。そうすると、日本原子力発電という会社は、一切の営業活動をしていないわけですから、本当は収入がないはずなのです。けれども、電力各社 が基本料という形でお金を払って、日本原子力発電の倒産を防いでいるのです。

R:東京電力とか九州電力とか関西電力が日本原子力発電にお金を払っている。その払っているお金は我々の電気料金に上乗せされているという理解でよろしいでしょうか。

小出:そうです。それぞれの電力会社の電気料金に上乗せされています。私の場合、関西電力から電気を買っているわけですけれども、その料金に含まれてしまっているわけです。

R:資本主義の論理で動いているわけじゃないってことですね。

小出:もちろんです。原子力というのは、もともと資本主義の論理では動いていないのです。ですから、大きな事故 が起きたとき、普通の企業であれば自分で責任を取るわけですけれども、原子力に関する限りは、責任を取ろうとすれば会社が潰れてしまうことが分かっている ので、最初から『原子力損害賠償法』という法律をわざわざ作って、資本主義の原理を排除した例外を作ったのです。

動こうと動くまいと、どんなことをやっても儲かりますよということです。電気事業法の中で「総括原価方式」というのを作って、電力会社は原子力をやればやるだけ、とにかく儲かってしまうという仕組みをつくったのです。

R:なるほど。 そのような背景が、小出さんのいう「原子力マフィア」という言葉に結び付くわけですね。

※小出さんの音声をラジオフォーラムでお聞きになれます。

「小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ

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