安倍政権のもと原発再稼動の機運が高まっている。ここで一度、改めて原発のメリットと言われる事柄について整理と検証をしておきたい。日本が過去半世紀に渡って原子力を推進してきた大義名分の真偽を、京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに紐解いてもらう。(ラジオフォーラム)

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

◆電気料金がタダになる?

ラジオフォーラム(以下R):原発のメリットとは何でしょうか。

小出:私自身は、高校から大学に行くときに、原子力というものは、化石燃料がいずれ枯渇してしまうので、未来の エネルギー源だと聞かされまして、それを信じました。そして、原子力発電というのは安全だし、もし発電ができるようになれば、電気料金がタダのようになる ほど安く発電できると聞きました。

R:タダのようになると言われていたのですか。小出さん、それは50年ぐらい前の話ですね?

小出:はい。 日本が原子力というものに足を踏み込んだのは1954年なのですが、その当時はもう電気代が決められないくらい安くなる。ある新聞では電気料金が2000分の1になるというような期待までありました。

R:そうなのですか。けれども今、日本の電気料金は世界一高いと言われていますよね。

小出:はい。ですから、全くの幻だったわけです。安全だと言われた原子力発電所が実は大変危険なもので、福島第 一原子力発電所の事故のようなものも起きてしまうということが、すでに事実として分かっています。更に、私が期待した未来のエネルギー源になるということ も、地球上のウラン資源が大変少なくて、実は石油や石炭よりも早くウランがなくなってしまうという、そんなものだったのです。原子力にかけた夢は全てが幻 でした。

R:そうすると、今も繰り返し言われる「原発はコストパフォーマンスに優れている」というような話は、もう真っ赤なウソだということですか。

小出:もちろんです。今、進行している福島第一原子力発電所の事故の被害を本当に賠償しようと思うのであれば、東京電力が何十回倒産しても足りません。日本の国だって倒産するというほどの被害が、もうすでに出ているわけです。

それを知らぬ存ぜぬで逃げおおせようと、国も東京電力もしているわけですけれども、本当に被害を受けている方々の苦痛をきちんと賠償しようと思うな ら、大変なお金がかかってしまうわけです。原子力なんていうものは、もう話にならないほど高いものだということが、すでに分かっているのです。

もし本当に原子力を進めている人たちが「原子力が安い」と言うのであれば、きちんとその経済原則に則って、原子力に関しても普通の民間の保険を適用 すればいいのです。けれども、民間の保険会社はどこも原子力の保険など引き受けようとはしません。だから今のように国が出てこざるを得ないということに なっているわけです。
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