2014年10月30日、国と東京電力は、福島第一原発1号機の廃炉工程表を見直すことを発表した。使用済み核燃料の取り出しは2年遅れの2019年か ら、原子炉内の熔融燃料は5年遅れの2025年から取り出すことを検討する。この廃炉計画の見直しについて、京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに 聞いた。(ラジオフォーラム)

京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

◆核燃料を全て掴み出すのは不可能

ラジオフォーラム(以下R):廃炉行程表見直しのニュース聞いて、どう思われましたか?

小出:残念と言えば残念ですし、当たり前と言えば当たり前のことだと思います。2011年3月11日に福島第一原子力発電所の事故が起きて以降、東京電力も国も、とにかく楽観的な見通しのもとで事故に対処しようとしたため、ことごとく失敗しながら今日まで来てしまいました。

廃炉ということに関しても、私から見ると、彼らは実に楽観的な状況というのを想定して、ロードマップを描いたわけです。けれども、そんなものは到底できる道理がないと私は思ってきましたが、その通りになっています。

R:使用済み燃料プールからの燃料の取り出しについては現在、4号機でも行われています。熔け落ちた燃料を取り出すということは非常にハードルが高いと、小出さんもかねてから発言し続けておられますが。

小出:私は「できない」と発言しています。

R:どうしてできないのでしょうか。

小出:先ほども申しましたように、国や東京電力はとても楽観的な見通しを立てているわけです。例えば、熔け落ち た炉心は、原子炉圧力容器の底を抜いて下に落ちたわけですけれども、落ちたところは、私たちがペデスタルと呼んでいる部分で、その床の上に饅頭のように堆 積しているというのが、国や東京電力の描いている絵なのです。

R:現実は恐らくそうではないと。

小出:はい。東京電力の見通しのようなことは到底ないと私は思っています。ペデスタルと呼ばれている部分には、 人間が出入りするための出入り口があるのですけれども、圧力容器の中に入れた水は、すでに抜けてしまった底からペデスタル部分に落ちます。そして、その水 はペデスタルの出入り口からどんどん外に漏れ出しているわけです。熔け落ちた炉心も、その水の流れと一緒にペデスタルの外部に流れていっているはずです。 そうなってしまいますと、熔けた炉心は格納容器の壁と接触してしまっていて、すでに、その格納容器の壁を貫通しているかもしれないという状況になっている はずだと私は思います。

国や東京電力は、いつの時点か圧力容器の上の方から、その下に饅頭のように溜まっている熔け落ちた炉心を上に掴み出そうとしているわけですけれど も、その場所には実はない。そこにあったとしても、何割かがあるだけで、何割かはもう外に出てしまっていると私は思いますので、掴み出すということはでき ないだろうと思います。

R:そうすると、作業はそこで行き詰まり、行程の見直しがさらに迫られるだろうことも十分に予想できますね。

小出:十分というか、必ずそうなると私は思います。

R:ありがとうございました。
現実の被害の凄まじさから目を背け、事故を小さく見せようとしてきたために、いろいろなことが後手に回っている。事故直後にSPEEDIの情報を公開しな かったり、避難区域を徐々に拡大させていったりしたことからもそれは分かる。結局は事故発生から今日まで、政府と東京電力の事故に向き合う姿勢は何も変 わっていないということなのだろう。

 

「小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ

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