シリア北東部の要衝都市、カミシュリはクルド人が多数を占め、ほかにアラブ人、アッシリア人、アルメニア人、トルコ系住民などが暮ら してきた。かつては、クルド民族運動を警戒するアサド政権が秘密警察網を張り巡らせていたが、内戦以降はクルド組織が台頭、現在は町の約７割を掌握し、政 府軍と分割統治する状況となった。一方、ハサカ県南部で勢力を拡大するイスラム国（ＩＳ）はカミシュリ近郊まで迫り、町の制圧を目指して榴弾砲で連日、砲 撃を加えていた。（取材：玉本英子）
【この記事の現地取材の時期は昨年9月】
第７回 ◆北東部に迫るＩＳ～クルド組織、政府軍の三つ巴の戦いに
シリア北東部のクルド住民居住地域の一部都市では文民暫定当局が行政運営を始めている。カミシュリ、ハサカなどの大都市部では、いまもアサド政権のシリア政府軍が残り、町を分割統治。南部からはイスラム国（ＩＳ）が攻勢をかけ、激しい戦闘が続く。カミシュリは、ダマスカスから約70０キロ。内戦前は20万の人口がいたが、国外避難などで住民は減少した。北東部一帯ではかつては古代メソポタミア文明やアッシリア帝国の勢力圏で、歴史的な遺跡や建築物も多い。ＩＳ支配地域では文化遺産が略奪や破壊の危機にある。キリスト教系のアッシリア人はＩＳの脅威にさらされ、あいついでクルド地域や国外に避難している。昨年6月にＩＳに制圧されたイラクのヤズディ教徒（ヤジディ教徒）の町、シンジャルはクルド組織・人民防衛隊（ＹＰＧ）とクルディスタン労働者党（ＰＫＫ）の戦闘部隊ＨＰＧによって12月に一部が解放された。地図は2015年1月の勢力図。(地図作成 ASIAPRESS)
ＩＳ戦闘員が所持していたパスポートや身分証。クルド組織YPGが拘束して押収したり、戦死した遺体から回収した。トルコ、リビア、バーレーン、チュニジアなど多数の国に及ぶ。パスポートのほとんどにトルコ入国のスタンプが押されていた。外国人戦闘員の多くがトルコ経由で入国していることがわかる。シリアへは国境検問所を通ったり、秘密裏に越境するなどして入ってくるという。（シリア・カミシュリで９月・玉本英子撮影）
ＩＳにはイラク出身のクルド人も参加していた。（シリア・カミシュリで９月・玉本英子撮影）
カミシュリのＹＰＧ地域のルドル・ヘリル広報官。「ＩＳの支配地域は広範囲におよぶ。アメリカの空爆だけでは、ＩＳを排除はできない」と話した。（シリア・カミシュリで９月・玉本撮影）
ＹＰＧはカミシュリの７割以上を掌握。地元クルド系政党主導のもとに独自に行政運営が始まっている。町のあちこちにＹＰＧのスローガンを掲げた看板が立っていた。ＹＰＪはＹＰＧの女性戦闘部隊。「闘争と抵抗を拡大しよう」とある。クルド語のほかに、アラビア語、アッシリア語でも書かれている。（シリア・カミシュリ９月・玉本撮影）
一方、カミシュリ中心地は今もシリア政府軍が統治する。地区にはバッシャール・アサド大統領や父親ハフィズ前大統領の肖像画があった。（シリア・カミシュリ９月・玉本撮影）
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