集団的自衛権を使えるようにするための安全保障関連法案は「合憲」か「違憲」か、国会で論戦が続いている。何が問題で、何が嘘なのか。法案が成立すると、この国はどうなるのか。新進の憲法学者で関西大学の高作正博教授に聞いた。(矢野 宏・新聞うずみ火)

今回の法案審議の内容を見ると、まさに解釈改憲による「クーデター」。憲法学者で関西大学の高作正博教授は言う。(撮影・樋口元義)

今回の法案審議の内容を見ると、まさに解釈改憲による「クーデター」。憲法学者で関西大学の高作正博教授は言う。(撮影・樋口元義)

◆解釈改憲による「クーデター」か

今回の法案審議の内容を見ていると、まさに解釈改憲による「クーデター」です。憲法の内容を変えるためには改正手続きが必要です。本来、その手続きを踏まえなければならないのに、解釈によって勝手に内容を変えてしまうというやり方が「解釈改憲」というものです。

クーデターとは、他の機関が持っている権限を勝手に奪い取るもの。例えば、議会が大統領の解任権もないのに解任したり、逆に大統領が議会の解散権も ないのに辞めさせたりするやり方です。本来、主権者である私たち国民が決めるべき憲法の変更に関する決定権を、勝手に政治家が奪い取っているという状況で すので、今の日本の状況はクーデターの途上にあるのではないかと思います。

4月27日にガイドラインが改定されました。日米の防衛協力に関する指針を決めているもので、その改定が法案審議に先立って行われてしまったのです。

ガイドラインの中身は、審議されている内容が先取りされているもので、気になる点は二つ。一つは「平時から利用可能な同盟調整メカニズム」の設置。事が起こってからではなく、今の時点から同盟調整メカニズムは機能するのだという考え方です。

日常の訓練とか計画の作成とか、基地の使用にいたるまで、日米調整メカニズムを通じて同盟強化をうたっています。つまり、自衛隊と米軍との一体化です。

二つ目は、その一環として「日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動」。集団的自衛権の行使をにらんだ計画策定から日常の訓練にいたるまで、場合によっては日本から米軍と自衛隊が一体となって海外へ展開することがすでに日米間で合意がされているのです。

ガイドラインの改定を受け、11の法律の制定や改正の提案がなされています。その中で、「国際平和支援法」が新法の制定です。期限付きで派遣する特 措法ではなく、恒久法化が念願だったのです。国際平和支援法が通ってしまうと、法律の制定は終わりで、あとは国会で具体的な計画が持ち上がった時に国会審 議になっていくだけです。残る10本は既存の法律の改正です。従来からある法律の改正案が一括して提案されています。

周辺事態法が「重要影響事態法」という法律に改正されようとしています。周辺事態というのは日本の周辺ですから、地理的には限界があります。その限 定をとっぱらってしまいたいのです。米軍の行くところが重要事態と認定されてしまえば、自衛隊はどこまでもついて行って燃料とか医薬品とか食料とかをせっ せと運ぶ。そういう役割を担うことになるわけです。

「船舶検査活動法」という法律があります。いわゆる「臨検」と言われている活動です。例えば、米軍の敵国になるような国に物資が海上で運ばれようと しているとき、船を止めて積荷を検査し、どこに持っていくのかを調査して、場合によってはそこで止めるという作業です。従来の「船舶検査活動法」は周辺事 態のみということになっていましたが、それこそ地球の裏側まで米軍とくっついて行くことになります。(つづく)
【矢野 宏・新聞うずみ火】

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