ダマスカス近郊、東ゴータ地区は現在、自由シリア軍など反体制派の支配下にある。しかし、生活に困窮する人たちのなかには、武装組織イスラム国(IS)の戦闘員になる者が少しずつだが、出始めているという。地区の人たちは日本人人質殺害事件を、そして日本をどう見ているのか。東ゴータにとどまって活動する20代のカメラマン、ハッサン・アル・ディーン氏とネット回線電話を通じてインタビューした。【玉本英子2015年2月・4月】

シリア・ダマスカス郊外、反体制派が支配する東ゴーダ地区では電気、水道も寸断されている。地区には井戸があるが衛生状態が悪く飲料水にはならない。地区では給水車で水が販売されている。【2015年2月撮影:ハッサン・アル・ディーン】

シリア・ダマスカス郊外、反体制派が支配する東ゴータ地区では電気、水道も寸断されている。地区には井戸があるが衛生状態が悪く飲料水にはならない。地区では給水車で水が販売されている。【2015年2月撮影:ハッサン・アル・ディーン】

◆自由シリア軍は以前に比べて、弱まったと聞きますが。
ハッサン:
東ゴータのいくつかの小さな地区はアサド政権の政府軍の支配下にありますが、地区一帯のほとんどは反体制派が掌握しています。自由シリア軍が趨勢を占め、ほかにはヌスラ戦線や、イスラム軍、ファイラック・アル・ラハマンなどの武装組織です。自由シリア軍とISとの大きな戦闘もありました。
ISが地区に攻め込もうとしていて、自由シリア軍がISの隊長たちを殺し、何人かを拘束しました。その時、地区の人たちの中に、ISに合流しようとした人たちがいました。あわせて500人ぐらいです。

◆ISが他の地域から東ゴータの中に入るというのは、シリア政府軍の検問もあり、容易ではないと思うのですが。
ハッサン:
多数のISが外から入り込んできたのではありません。東ゴータの住民の中で、ISに入った人たちが現れたということです。

◆いま、だいたい何人ぐらいがISを支持しているのですか? ISは少しずつ影響力を増しているのでしょうか?
ハッサン:
何人かは分りませんが、例えば、アブ・ハーリドという人がいます。ダラアの出身です。とても裕福で2万ドル持っているそうです。彼はISに属していて、東ゴータに潜伏しているようです。自由シリア軍は彼を必死になって探している。東ゴータで、ISを支持する人たちは少しですが増えてきているようには思います。

◆なぜISに加わろうとする人が出始めたのですか?
ハッサン:
お金のためです。誰もが過酷な状況に置かれている。食べ物もないなか、家族や子どもを養わなければいけない。ISは資金があるから、お金をもらえる。
だから加わろうとするのです。本当かどうか確認は取れませんでしたが、聞いたところでは、指導者バグダディに忠誠を誓いISに参加した者には、イスラムの祝祭である犠牲祭(昨年10月)に1000ドルもらえたということらしいです。そのほとんどが自由シリア軍からISに入った人たちと聞きました。
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