◆「自主避難者への支援は無用」に怒り

R:福島第一原発の放射能汚染水の放出はもっと大きな問題です。これを漁協が容認したというニュースが以前に報じられましたが、やっぱり多額の補償金がこの漁協に対して積まれたということも考えられるのでしょうか。

小出:もちろんです。要するに、東電としてはカネで漁民の口を塞ぐというようなことをずっとやってきたわけです。今の福島第一原子力発電所の状況を 考えれば、放射能汚染水のコントロールに関して、基本的にはもうできない状況になっているわけですから、あとは漁民の口をカネで封じるという以外にはやり ようがないと思います。

R:凍土壁などの対策をしていますけれど、この汚染水は止まっていませんよね。

小出:止まらないです。恐らく今後もトラブルが、何度も何度も起きるだろうと思います。

R:原子力規制委員会の田中俊一委員長が「自主避難されている方は、自分は嫌だからということで避難している人」だから「国が自主避難者を支援する必要はない」という考え方を示しましたが、この発言に対してどう考えますか。

小出:怒りに震えました。本当に今、苦難に落とされている人たちは、何も悪いことをしたわけではないのです。東京電力が「放射能なんて撒き散らさな い」と説明してきたにも関わらず、大量の放射性物質をバラまきました。日本の国も「東京電力原子力発電所が大事故を起こすことなんてない」と言ってお墨付 きを与えてきたわけですけれども、それが全て嘘だったわけです。そのために今、苦難に落とされてしまって、言葉では言いようのない多様な困難を負わされて いるわけです。

その人たちを何とか支援する、支えるということが、東京電力と国のまずはやらなければいけないことだと私は思います。そして田中俊一さんも、今は原 子力規制委員会の委員長になっていますけれども、もともと原子力ムラ、原子力マフィアの中心人物だったわけで、福島第一原子力発電所の事故に対して重い責 任のある人です。その人が、自分がやってきたことを棚に上げて、自分が苦難を負わせた人たちに対して、「何の賠償もしないでいい」ということを言うという のは、本当に異常な世界なのだなと私は思います。

R:そうした人が規制委員会の委員長になっているということ自体が問題ですね。

小出:そうです。本当は原子力マフィアの人たちを規制委員会などにしてはいけなかったのですけれども、今の原子力規制委員会は、ほとんどが原子力マ フィアの人たちが占めてしまっています。原子力マフィアとしては誰も責任をとらないまま、原子力発電所の再稼働を進めています。そのために自ら原子力規制 委員会という組織を作ってきているわけですから、本当におかしな世界だなと思います。

※小出さんの音声をラジオフォーラムでお聞きになれます。
「小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ

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