しかし一体、どれだけの期間、中性子に被曝をすると常温でガラスになってしまうのかということが、実はわからなかった。原子力発電所をやりながら、 実際の原子力発電所を使ってテストをしているという状態で今日まで来ているわけです。ただ、原子力発電所を運転し始めた当初は、恐らく40年だろうと思っ たのです。

ですから米国などは、初めから原子力発電所の寿命は40年と決めて長い間やってきました。そして、運転しながら、どこまで脆性に近づいてきたかとい う事をテストしながらきたわけです。そして米国では、なんとかまだもう少しはいけるだろうというように考えるようになって、40年を超えた原子力発電所も さらに20年間運転を続けてもいいというようなルールをつくって、確か10年ぐらい前だと思いますけれども、次々と40年に達した原子力発電所の運転期間 を延長するということをやっていたのです。

日本の場合は、私は米国の属国と呼んでいますけれども、米国のやるようにやってきたわけです。でも、40年という数字を明確には決めていなかったの です。しかし、福島第一原子力発電所の事故を受けて、原子炉等規制法を手直ししまして、原発の運転期間は基本的には40年と記しました。そして1回に限っ て、20年以内であれば運転延長を認めてもいいというような書き方にしたのです。むしろ、米国がやっていたものに近づけたということになっています。

多分このまま私は続くと思いますけれども、今後また原子力を進めるという勢力がどんどん巻き返しを図ってきて、例えば、1回に限り20年以内の延長 ができるというような記載を、もっと多数回にわたって運転延長ができるというように書き換えるかもしれませんし、 「20年以内ではなくて、いや、30年でもいいだろう」というようなそんな話にもなるかもしれないと、私は警戒しています。

現に、経済産業省が2015年4月に、2030年の電源構成で原子力発電所が20パーセントから22パーセントを占めるというような案をまとめたわ けです。もし、それを実現しようとするならば、40年で原子力発電所を廃炉にするなんていうことでは到底できませんので、どんどん運転の延長を認めていく ということになるだろうと、私は思います。

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