プルトニウムは容易に核兵器に転用できるため、溜め込むことな く消費していくことが必要なのだが、その利用の要である高速増殖炉は、原型炉「もんじゅ」がナトリウム漏れ火災事故(1995年)を起こして以来、全く動 かず開発が頓挫しているのが現状だ。そこで、プルトニウム消費の「本命」として浮上してきたのがプルサーマル発電なのである。

福島第一原発事故以前に、九州電力玄海3号機、東京電力福島第一3号機、四国電力伊方3号機、そして高浜3号機でプルサーマル発電が実施されてい た。国や電力会社は「ヨーロッパでは1960年代から始まり、(中略)豊富な実績があります。フランスでは、今ある原子炉の3分の1、ドイツでは2分の1 くらいの原子炉でプルサーマルを行っています。これまで事故は発生しておらず、安全に利用されています」(電気事業連合会のHP)とする。

だが、MOX燃料は通常のウラン燃料に比べると、制御棒の利きが悪くなるなど、多くの危険性が指摘されてきた。元京大原子炉実験所助教の小出裕章さ んは「ウラン燃料を使用するために設計された原子炉でプルサーマル発電を行うことは、石油ストーブで灯油にガソリンを混ぜて使用するようなもの。事故のリ スクは格段に上がる」と危惧する。しかし、原子力規制委員会は高浜3
号機の安全審査にあたって、プルサーマル発電については全く考慮をしていない。

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