大分県由布市と熊本県阿蘇市の被災地を訪ねる現地ルポの2回目。最大震度7を観測した熊本地震発生から3日目の4月17日、由布市を取材した記者は南に進路を取り、豊後大野市、竹田市を抜けて国道57号を西へ車で2時間、熊本県阿蘇市に入った。(矢野 宏/新聞うずみ火)

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紀元前281年創建と伝えられる阿蘇神社も熊本震災で大きな被害を受け、この神社を心の拠り所としていた地元の人々に大きな衝撃を与えた(2016.4.17撮影/矢野宏)

紀元前281年創建と伝えられる阿蘇神社も熊本震災で大きな被害を受け、この神社を心の拠り所としていた地元の人々に大きな衝撃を与えた(2016.4.17撮影/矢野宏)

◆地元の心の拠り所だった

阿蘇市は熊本県の北東部、阿蘇山の北側に位置する都市で人口は2万8000人ほど。ここには紀元前281年創健と伝えられる阿蘇神社がある。日本全国に450社ある阿蘇神社の総本社だ。

だが、16日未明から断続的に続く地震で、国の重要文化財に指定されている二層の楼閣と拝殿が倒壊し、神殿3棟も損壊した。高さ18メートルの楼閣は日本三大楼閣の一つと言われていた。

神職の内村泰彰さん(37)は境内裏にある宿舎で寝ていたところ、突然激しい横揺れに襲われた。揺れは30秒ぐらい続いたように感じたという。家具が倒れ、上に置いていたものがすべて落ちて足の踏み場もないほどだった。揺れが収まるのを待って神社へ駆けつけると、柱が折れて潰れた拝殿を目の当たりにした。

「何が起きたのか理解できないほど、パニック状態でした。2300年の神社の歴史でこれほどの被害はありません。神社は地元にとっては心の拠り所ですので、早く復旧させたいです」

2年前、神社で長女の七五三のお参りをしたという一の宮町宮地の矢野聡美さん(41)は、倒壊した楼門を見て「涙が出そう」と言ったきり、言葉を失った。

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