6月末の今、北朝鮮全域は農村支援の真最中である。春と秋の農繁期に、一般労働者、学生、主婦から、平壌に住む労働党や政府の大幹部までが、一斉に農村に行って草取りや田植え、堆肥作りなどを手伝うことが恒例になっている。

食 糧配給制度が維持されていた頃は、自分たちの食べる穀物を作る農場の仕事を手伝うのは、「全体のための奉仕活動」という意味と役割があった。この「北朝鮮 式社会主義の美風」にほだされて、外国の大使館員たちまでが農場に出向いて田植えなどに汗を流すニュースが、毎年報じられていたものだ。

し かし、この「美風」もすっかり変質してしまった。現在の北朝鮮では、平壌以外の労働者、住民には、一部を除いてほとんど食糧配給はなくなっている。庶民に すれば、農作業を手伝っても何も得るものがないのだから、しんどいうえに時間を取られるだけだ。「全体のための奉仕活動」ではなく、「ただ働き」をさせら れている、というのが農村支援の共通認識になったのは、もう随分昔のことだという。

だ が、嫌だからといって農村支援に参加しないわけにはいかない。農村支援を組織するのは、職場、学校、所属組織、居住地の人民班(末端行政組織、隣組のよう なもの)毎なのだが、そこで参加を厳しくチェックされる。不参加者は批判の対象となり、悪質とみなされると拘束される場合もある。

疲れ果てたのか、農村作業の合間に横になって休む女性。2013年6月(アジアプレス)

疲れ果てたのか、農村作業の合間に横になって休む女性。2013年6月(アジアプレス)

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