北朝鮮に対する固定したイメージの一つに「北朝鮮の人々は洗脳されたロボットのような存在だ」というものがある。

国内から暴動、デモなどの抵抗活動の情報が聞こえて来ず、国営メディアや北朝鮮を訪問した外国のメディアに登場する人々が、一様に指導者礼賛や、政権の主張の通りのことしか口にしないからだろう。加えて、軍事パレードやマスゲームなど、一糸乱れぬ集団行動の映像を数多く見せられてきたため、「右を向けと言われれば右を向く人々」という印象が深く刻まれてしまったのだと思う。

警官を指さし罵る女性。2010年6月平安南道にて撮影キム・ドンチョル(アジアプレス)

警官を指さし罵る女性。2010年6月平安南道にて撮影キム・ドンチョル(アジアプレス)

 

長く北朝鮮の人々と会い続けてきた経験から言えば、北朝鮮の人々は決して「洗脳されたロボット」ではない。政治的な発言や行動は命取りになるためできないけれど、社会の不条理や不正について、おかしいことはおかしいと考えている人が大部分である。金正日政権による度重なる強い商行為抑圧にもかかわらず、全国で市場を拡大させたことがそれを証明している。

◆警察官突き飛ばし罵る女性

紹介する写真は2010年6月に平安南道で撮影されたものだ。金を取って荷台に人を乗せる「サービ車」と呼ばれる乗合トラックに、保安員(警察官)が賄賂を要求した。運営者の女性がそれに反発し、保安員を突き飛ばし罵声を浴びせる場面である。

この「サービ車」(乗合トラック)の保安署が貸し出したもの。2010年6月平安南道にて撮影キム・ドンチョル(アジアプレス)

この「サービ車」(乗合トラック)の保安署が貸し出したもの。2010年6月平安南道にて撮影キム・ドンチョル(アジアプレス)

警官が検査のふりをして「サービ車」に近づき、何ごとか難癖をつけ始めた。2010年6月平安南道にて撮影キム・ドンチョル(アジアプレス)

警官が検査のふりをして「サービ車」に近づき、何ごとか難癖をつけ始めた。2010年6月平安南道にて撮影キム・ドンチョル(アジアプレス)

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