◆2000人の女性や子どもがISに拉致されたまま

ISによるイラク北西部シンジャルでのヤズディ教徒襲撃から2年目にあたる8月3日を前に、クルド自治区ではヤズディ教徒らが追悼集会を開いた。(イラク北部・8月2日)

ISによるイラク北西部シンジャルでのヤズディ教徒襲撃から2年目にあたる8月3日を前に、クルド自治区ではヤズディ教徒らが追悼集会を開いた。(イラク北部・8月2日)

 

武装組織イスラム国(IS)がイラク北西部のシンジャル一帯のヤズディ教徒を襲撃したのは2014年8月。侵攻したISは住民へ銃を突きつけイスラムへの改宗を迫り、受け入れなかった住民や、見せしめとして1000人以上を殺害した。

多数の女性や子どもはIS支配地域に移送された。幼い女児を含む女性は、戦闘員に分配され、強制結婚を強いられた。男児の一部は戦闘員訓練施設に監禁された。

襲撃事件から2年目を前に、イラク北部のクルド自治区各地で追悼集会が開かれた。ドホーク郊外カンケにあるヤズディ避難民キャンプでは、青年団体が集会を呼びかけ200人が参加。ヤズディ住民への支援と保護を訴え、また今も拉致されている被害者の早期救出に向けて国際社会が積極的に動いてほしいと求めた。

ダハム・ラロさん(28)はIS襲撃時、家族とともに、近くにあるシンジャル山に逃れたものの、食料や水もなく、お年寄りや赤ちゃんが飢えや脱水症状で息絶えたという。

電話取材に対し、ダハムさんは、
「襲撃から2年。誰もヤズディ教徒を守ってくれなかった。イラク政府も、これまで隣り合わせに暮らしてきたイスラム教徒も信じることができなってしまった。虐殺が2度と起きないよう国際社会に動いてほしい」と話した。

今年6月、国連の独立調査委員会は、ISによるヤズディ殺戮を「虐殺(ジェノサイド)」と認定している。ヤズディ団体によると、今も2000人の女性や子どもがIS支配地域に拉致されたままだという。(玉本英子)

今もISの支配地域に拉致されたままのヤズディ女性や子どもたちの救出を呼びかける参加者たち。(イラク北部・8月2日)

今もISの支配地域に拉致されたままのヤズディ女性や子どもたちの救出を呼びかける参加者たち。(イラク北部・8月2日)

追悼集会の呼びかけ人のひとり、ダハム・ラロさん(28・中央)の親族も殺されたり、拉致されている。ヤズディ教徒が直面した悲劇に国際社会が関心を寄せてほしい、と話す。(イラク北部・8月2日)

追悼集会の呼びかけ人のひとり、ダハム・ラロさん(28・中央)の親族も殺されたり、拉致されている。ヤズディ教徒が直面した悲劇に国際社会が関心を寄せてほしい、と話す。(イラク北部・8月2日)

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