留学生の1人が窓に貼りつけた言葉。取材からしばらく後、この留学生は寮から姿をくらました。撮影 出井康博

留学生の1人が窓に貼りつけた言葉。取材からしばらく後、この留学生は寮から姿をくらました。撮影 出井康博

 

「留学生」という名の奴隷労働者たち(1)へ

ブローカーや悪徳日本語学校に食い物にされるベトナム人留学生。苦境に陥った彼らの犯罪が増加している。このままでは、かつて中国人留学生によって引き起こされた「福岡一家4人殺害事件」のような凶悪犯罪が起こるかもしれない。(アイ・アジア編集部)

◆追い詰められたベトナム人留学生の犯罪急増

最近、新聞やテレビでベトナム人による犯罪がニュースで取り上げられることがよくある。

今年2月には、埼玉県でベトナム人グループが同じベトナム人を相手に強盗・殺人事件を起こし、長野県まで逃走して騒ぎとなった。昨年9月には、大阪市生野区の路上でやはりベトナム人同士の集団暴行・殺人事件があった。少し遡ると、2014年にはベトナム人による「ユニクロ」窃盗事件が頻発した。これらの事件には共通点がある。いずれも「留学生」が加害者に含まれるのだ。

ベトナム人留学生の数はわずか5年間で約10倍も増え、今では5万人近くまで膨れ上がっている。これまでの連載で述べたように、その大半は出稼ぎ目的の“偽装留学生”である。そうした留学生の増加と比例し、彼らが起こす犯罪も増えている。

昨年、ベトナム人の検挙件数は3315件に達し、前年から3割以上も増加した。在日外国人に占める割合では7パーセントに過ぎないベトナム人が、全体の4分の1近くの犯罪を犯しているのだ。

刑法犯の数では、人口で在日外国人の約3割を占める中国人よりも多い。窃盗は24パーセント、万引きに至っては実に57パーセントがベトナム人の犯行なのである。こうしたベトナム人犯罪のうち、留学生は半分以上に関わっている。

ベトナム人留学生たちは、ほとんどが多額の借金を背負い来日している。「日本に留学すれば、アルバイトで月20万—30万円は簡単に稼げる」といったブローカーの甘い言葉を信じてのことだ。しかし、現実に「月20—30万円」を稼ぐことは容易ではない。
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