ロヒンギャ・ムスリムの難民キャンプ、洗濯に精を出す女性。(ラカイン州にて撮影:宇田有三)

ロヒンギャ・ムスリムの難民キャンプ、洗濯に精を出す女性。(ラカイン州にて撮影:宇田有三)

<特別連載>ミャンマーのロヒンギャ問題(1)へ

Q. それでは、かれらを何と呼ぶのがいいのですか?
A.
実際に自分たちを「ロヒンギャ」と呼びたい、呼んで欲しい人がいるのは事実です。ですが、果たして彼らが「ロヒンギャ民族」と呼んで欲しいのか「ロヒンギャ・ムスリム」と呼んで欲しいかといえば、これまでの私の経験では、ほとんどのロヒンギャは後者を選んできました。なので、ミャンマー国内の土着化したムスリムの一つとして「ロヒンギャ・ムスリム」と呼ぶのがいいのではないかと思っています。

Q. 実際にバングラデシュで、ロヒンギャの人びとに会った印象はどうですか?
A.
バングラデシュでは東南部コックスバザール地域のロヒンギャの難民キャンプ(公式キャンプ2箇所、非公式キャンプ2箇所の計4箇所)を訪れました。現地に入って初めて知ったのですが、実は難民キャンプに暮らしていないロヒンギャの人びとが20万人近くいたことでした。

Q. 20万人を超えるロヒンギャたちは、何をしているのですか?
A.
その正確な数字は分かりません。だいたいそれぐらいの数だと推測されています。彼ら彼女たちの立場は、それこそ千差万別で、軍政期にミャンマー側から逃れてコックスバザール周辺で、賃金労働者や日雇い農民としている者もいます。また、商売人としてバングラデシュ側とミャンマー側で貿易業を営んでいる人もいます。

Q. ロヒンギャは、バングラデシュ人(ベンガル人)と一緒に、普通に生活しているのですか?
A.
実際に詳しい調査をしたわけではありませんので、はっきりしません。ただ一か月ほど現地に滞在する中で、ロヒンギャの人が現地の人に差別されているということは感じました。実はもっと詳しい調査や取材が必要な部分ではないかと思っています。

Q. ロヒンギャは、バングラデシュで暮らすのに言葉の問題はないのですか?
A.
ロヒンギャたちは通常、ミャンマー語ではなく、チッタゴン方言のベンガル語を話しています。私自身、ミャンマー語とベンガル語の違いぐらいは分かりますが、ベンガル語とチッタゴン方言のベンガル語の違いは全く分かりません。

※ 2016年5月、チッタゴン地域をフィールドワークしている研究者に話を聞く機会がありました。その際、チッタゴン方言もいくつかに分かれており、ロヒンギャたちの話すチッタゴン方言は特別なチッタゴン方言で、「チッタゴン方言」と簡単にいえないのではないか、という説明を受けました。ロヒンギャたちが話すのは、チッタゴン方言の中でも特別な言葉の一つなのだから「ロヒンギャのチッタゴン方言」とでも表現できるのでは、とのことでした。(この辺りも不明確な部分が多く今後の研究が待たれます)

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