◆福島第一原発事故を引き起こし、被災者の救済も満足にできずにいる日本がなぜ?

批判が必至の状況で、なぜ政府はインドと原子力協定を結んだのであろうか。実は、東京電力福島第一原発事故後も、政府は成長戦略から原発輸出を外していない。

原発の新規導入を検討している国は、アジアや中東など途上国を中心に約20カ国あり、2030年には世界の原発の発電容量が13年比で最大88%増えると国際原子力機関は予測する。

原子力協定を含む日印共同声明に署名する安倍首相とモディ・インド首相(11月11日・内閣広報室公表写真)

原子力協定を含む日印共同声明に署名する安倍首相とモディ・インド首相(11月11日・内閣広報室公表写真)

<<<日印原子力協定(1)日本からインドへの原発輸出が可能にに戻る
国内での原発の新設・増設が見込めない現状で、いわゆる原発メーカーにとっても輸出が頼みの綱となっている。だが、各国との受注競争で苦戦を強いられている状況で、11月9日には輸出が決定していたベトナムで、同政府が財政難を理由に白紙撤回したことが明らかになった。

しかも、原発輸出にはクリアすべき課題が山積しているが、それらを全て先送りにして安倍首相自ら「トップセールス」をしているのが現状だ。たとえば、輸出先で日本並みの規制基準を本当にクリアするのか、現地での安全性を担保する仕組みがないまま進められている。重大事故の賠償責任や使用済み核燃料の処分先など、国内で解決されていない課題も先送りだ。場合によっては、多くの問題を輸出先の国に押しつけることになりかねない。

国際関係を無視できない現代において、国際協力や国際貢献は必要なことであろう。

しかし、福島第一原発事故を引き起こし、その原因すら未だに明らかにできず、事故の後始末のめども立たず、被災者の救済も満足にできずにいる日本が、原発を輸出しようとしていることに、道義的責任はないのだろうか。主権者である私たちは、そのことを今一度考えなければならない。

今回の日印原子力協定の締結に加え、政府のもう一つ「不可解」な対応がある。10月27日、国連総会第1委員会(軍縮)は、「核兵器禁止条約」制定に向けた交渉を来年開始すると定めた決議を賛成多数で採択したが、日本はそれに反対した。

岸田外相は、反対理由を「核保有国と非核保有国の対立を一層助長する」などと述べたそうだが、はっきり言って詭弁であろう。広島・長崎の被爆者を前に核廃絶を誓った以上、日本は「賛成」の先頭に立つべきなのは言うまでもない。

日印原子力協定は、どのような建前を並べようとも、国内で斜陽化している原発メーカーを救うためのものとしか考えられない。

一部産業の保護や目先の利益のために、「唯一の戦争被爆国」としての責任や、被爆者・原発事故被災者への配慮をかなぐり捨てて平然としている安倍政権の姿は、諸外国から見れば日本の主権者の姿になる。その恥ずかしさを、私たちは自覚できているのであろうか。(了)(高橋宏/新聞うずみ火)

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