同志のみなさん!

新しい一年が始まるこの場に立つと、私を固く信じ、一心同体となって熱烈に支持してくれる、この世で一番素晴らしいわが人民を、どうすれば神聖に、より高く戴くことができるかという心配で心が重くなります。

いつも気持ちだけで、能力が追いつかないもどかしさと自責の念に駆られながら昨年を送りましたが、今年は一層奮発して全身全霊を打ち込み、人民のためにより多くの仕事をするつもりです。

私は、全人民が金日成同志と金正日同志を信頼し、前途を楽観して『われら幸せうたう』の歌をうたっていた時代を、過ぎ去った歴史の中の瞬間ではなく、今日の現実にするために奮闘努力するつもりであり、一点のくもりもない清らかな心で人民に忠実に仕える人民の真の忠僕、忠実なしもべになることを、この元旦に厳かに約束します。

出典:朝鮮中央通信1月1日掲載の金正恩氏の新年辞(日本語)

北朝鮮には「領導者無謬の原則」がある。金正日氏-金正恩氏は、あらゆるメディアで一度も批判されたことがない。間違いを犯すことは「ありえない」からだ。失策の責任は常に他の幹部に向けられ、場合によっては粛清されることもある。
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金正恩氏の自己批判めいた発言は、どう受け取られたのだろうか?
A氏 その発言のため、幹部たちは党委員会に「自己批判書を書いて出せ」と言われていました。 何を間違って、何がうまくできたか、今年はどうするつもりか決意も書かされたということです。(金正恩氏は)『今年は一層頑張ります』と言っていたけれど、それはつまり(人民を)もっと締め上げるということなんです。何もしてくれなくていい。統制だけ緩めてくれればいい。今は、皆が商行為で生計を立てていますから、統制が緩くなれば少しは楽に商売できますから。

また、新年辞には「自力自強」で経済を発展させるというスローガンがあった。外国に頼らず、自前の資源とエネルギー、技術で産業振興を図るというわけだ。

A氏 「自力自強」なんて言うけれど、商売人たちが国の経済を守っているのにね。上の奴らは働きもせず口ばかりで生きている。市場に座って商売しているおばさんたちが朝鮮の経済を支えているんですよ。上の奴らが、いったい何を実現したというのでしょう? 市場がなくなれば(経済は)ひっくり返ってしまうのに。

別の取材パートナーB氏の言葉も紹介しよう。彼女も停電のためにテレビで新年辞放送は見ていなかった。

B氏 停電ということもあったけれど、新年辞なんて面白くもないのに、映画じゃあるまいし誰が見たいですか?  (自己批判的な発言があったので)幹部たちは自己批判書と決意文を書かされていました。
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付記 
1月8日は金正恩氏の誕生日だ。北朝鮮政権は、いまだに金正恩氏の生年を公表していない。韓国政府は1984年生まれだと推察している。すると33歳だ。B氏によれば、誕生日に金正恩氏への「忠誠の集まり」が機関ごとに開催されることになったという。とすると、公的な誕生日行事は初めてのことであり、金正恩個人崇拝が本格化する可能性がある。

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