2005年6月清津市の市場にてリ・ジュン撮影

 

金正恩時代になってから、教科書供給体制はどうなったか? 脱北者に取材した具体例をあげよう。

「金正恩時代になって発刊された新教科書は、良い紙質のものを無償で与えると言われていたが、実際に学校で生徒に与えられたのは『革命活動』などの主要科目だけで、他の科目は市場で買わなければならなかった。新教科書が出るとすぐ市場で売り出された」(2016年に咸鏡北道からの脱北した生徒の親)

「傷んだ教科書を新しいものに替えて生徒に供給するということになったが、『革命活動』数学、物理、化学などの主要科目だけが供給され、残りは生徒に市場で買わせることになった。教員の中には、生徒の親に直接販売する者もいた」(2016年2月に脱北した清津市の元教員)

「学校自体が新教科書を市場で買って来なさいと指示した。お金のない家の子供たちは共同で買って一緒に使った」(2016年に両江道から脱北した生徒の親)

「同じ教科書でも紙質も印刷もまちまちだった。当然値段が異なる。進級して必要なくなった古教科書を、親たちが市場に持ち込んで売った」(2016年に咸鏡北道からの脱北した本の商売人)

中央から供給される無償(国定価格)の教科書がまったく足らないため、各地方の印刷業者がデータを入手して独自に印刷して市場に卸したり、学校に配分された教科書を教師や役人が市場に横流ししたりしていたようである。教科書が十分に与えられないのは平壌でも同様とのことだ。背景には、北朝鮮政府の財政難と不正腐敗がある。

市場での教科書の販売価格についても脱北者に調査した。咸鏡北道会寧市、両江道恵山市では、2015年度は、国語、数学、英語は一冊当たり20中国元、革命歴史は10中国元、生物、地理、物理は5中国元だったとのことである。(2016年12月時点で中国1元は約16.5円)

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