大阪で行われた市民講座「南スーダン駆けつけ警護・武力行使の無力性と憲法の有効性」で講演する元自衛官の泥憲和さん(撮影・樋口元義さん)

南スーダンに派遣された自衛隊の新たな任務について考える「新聞うずみ火」主催の市民講座「南スーダン駆けつけ警護・武力行使の無力性と憲法の有効性」が2 月4 日、大阪市立東淀川区民会館で開講。元自衛官の泥憲和さんが、駆けつけ警護の実態と危険性について警鐘を鳴らした。(矢野宏/新聞うずみ火)

◆真の目的はアメリカの油田の警護

南スーダンPKOで陸上自衛隊がジュバに派遣されましたが、海上自衛隊と航空自衛隊もジブチに派遣されているのです。どうして、陸海空の3自衛隊が「アフリカの角」という狭い地域にいるのか。

話は2001年にさかのぼります。この年、アメリカで同時多発テロが起きました。ブッシュ政権は「アルカイダを引き渡せ」とアフガニスタンに迫りましたが、応じないので軍隊を投入した。「不朽の自由作戦」と呼ばれていますが、アフガニスタンを含む世界5カ所での同時作戦でした。

その一つはグルジア(現ジョージア)。カスピ海の原油を黒海へ送っていましたが、ロシアを迂回するパイプラインを通すため、戦略拠点であるグルジアに米軍を送ったのです。残りの3か所とは、フィリピンのミンダナオ島、中央アフリカのトランスサハラ、そしてアフリカの角です。すべて原油がらみです。アフガニスタンはただの口実ですから、国内をぐちゃぐちゃにしたまま、1年ほどで兵力の半分を撤退させ、イラク戦争を始めた。アフガニスタンは石油が出ませんから。

2005年のNHK「BS世界のドキュメンタリー」でこう解説されています。
「ブッシュ政権は産油国に侵攻し、油田地帯や石油関連施設に軍隊を配備する以外の戦略を持ち合わせていません。いまやアメリカ軍の目標はただ一つ、アメリカに対し友好的な産油国に軍隊を駐留させることなのです」

南スーダンの隣国エチオピアにはオガデン油田があり、ジブチまでパイプラインが通っています。南スーダンのヘグリグ油田の原油はスーダンを経由してポートスーダンから輸出されていますが、アメリカはスーダンをテロ支援国家に指定して南スーダンを分離させ、アメリカの影響力を及ぶようにして現在、パイプラインを建設中です。つまり、原油の運び出し拠点のジブチに海上自衛隊と航空自衛隊、南スーダンの産油地帯に陸上自衛隊が派遣され、アメリカの油田を守る下請けをさせられているわけです。

民政復興支援というのはただの口実です。何かあれば油田を守れるような自衛隊にしなくてはいけないから、戦える自衛隊にしなくてはいけないわけです。「駆けつけ警護」という新たな任務が加わりましたが、これも口実でしかないです。( 下 >>

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