育鵬社の中学校用歴史教科書。侵略・植民地支配の加害には触れていない。

 

森友学園問題とは何か。それは一学校法人への国有地売却や学校認可に政治家の介入があったか否かという問題に留まらない。この問題は、森友学園のような「戦前回帰的な教育」を、国の中枢を成す勢力が支援していることにある。たとえ森友学園が消え去っても、教育界では着々とこうした動きが推し進められていることを私たちは知るべきである。(矢野 宏/新聞うずみ火)

 ◆安倍‐松井体制の「教育改革」

『日本会議とは何か「憲法改正」に突き進むカルト集団』(合同出版)の著書がある「日本の戦争責任資料センター」事務局長の上杉聰さんは、森友問題について「安倍首相らの自民党右派と松井一郎大阪府知事率いる維新による『安倍―松井体制』の下で、籠池氏がいいようにやってきた。それが一気に暴露された」と見る。

「教科書のレベルでは、15年ほど前から日本会議を媒介にして歴史修正主義的な流れが進んでいますが、安倍―松井体制発足後、彼らが実現しようとする範囲が広がり、学校建設をやるまでにいたったということです」

2012年2月26日、「日本教育再生機構大阪」が主催した「教育再生民間タウンミ―ティングin大阪」で、当時野党だった自民党の安倍氏と松井知事が対談、二人は教育改革で意気投合したという。

二人を結びつけた日本教育再生機構は06年、「新しい歴史教科書をつくる会」から分かれて発足した団体で、愛国心教育を徹底し、歴史修正主義的な「育鵬社」発行の教科書採用を勧めている。

育鵬社の歴史教科書は、「神話に見るわが国誕生の物語」で始まり、侵略・植民地支配の加害に触れていない。公民の教科書は、「日本の役割」の項目で「世界の中の大国である日本は、これからもすぐれた国民性を発揮して…」と賛美し、安倍首相の写真が十数枚も使われている。八木秀次理事長ら顧問は日本会議の幹部でもあり、組織・運動面でも密接な関係にある。大阪支部には籠池氏もかかわっており、八木氏も塚本幼稚園で講演したことがある。森友学園の教育方針は、安倍首相や松井知事ら維新、日本会議、日本教育再生機構と極めて近い関係にある。
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