武装勢力の攻撃が活発だったイラク・ハウィージャの米軍兵士たち。(2004年撮影・アブドゥルバシッド)

イラクやアフガニスタンの戦場において米軍兵士が死傷する原因の約6割が道路脇爆弾(即製爆発物IED)よるものである。この他には、戦闘によるもの、ヘリコプター墜落、交通事故、誘拐、自殺などがあげられる。

道路脇爆弾が爆発すると、金属片が飛び散り、そばに居た人は、擦傷、貫通など複雑かつ深刻な傷を負う。皮膚、筋肉、骨格、肺、胃腸、循環器、脳、脊髄、末梢神経が傷つけられる。

爆風による衝撃で脳が損傷を負うこともある。その結果、MTBI(軽度外傷性脳損傷)を負う兵士が増加した。医療体制が整えられ、一命を取り留めるようになったが、意識喪失、精神錯乱、負傷時の記憶喪失などの後遺症が残る。

このような戦場での経験から、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を負う。PTSD の要因となるのは、自らの生命が脅かされると感じる体験や負傷、仲間が苦しんでいるのを目撃する、人を殺傷する経験などである。MTBIとPTSDの両方を発症する人も多い。

医学の発達、戦場での医療体制の拡充により、重症を負った兵士も生き延びるようになった。そのことは、重い障害や恐怖の体験をもちつつ生きることも意味する。

直接的・間接的な殺人の経験は、対人関係の問題を引き起こすもっとも重要な要因である。人を殺害することは、戦闘に遭遇する経験とは異なり、自分の行為に対して深刻な罪の意識を感じる要因となる(1)。

特に子どもに対する暴力や捕虜や非戦闘員への虐待などは、その行為者自身が激しい自己嫌悪に陥り、信頼や肯定的な関係をもつ能力に障害が生じることがある(2)。米国では近年、このような帰還兵の精神疾患を、PTSDと区別して「モラル・インジャリー(良心の呵責障害)」として注目するようになってきた(3)。

都市では民間人を巻き添えにしてしまう危険についても注意しなければならず、イラクでは62%の兵士が交戦規程のために、自らに危害が及ぶ可能性を感じても攻撃的に対応できなかったと答えている(4)。

また、気温40度を超す暑さ、砂漠での厳しい環境もストレスになったと考えられている。さらには、繰り返し派兵されることが、兵士にとって心身への大きな負担となる(5)。米軍では、前線に近いところで精神科医によるケアが行なわれるようなっているが、兵士を心の傷から守ることには成功していない。
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