◆大学誘致が難航の中、獣医学部新設を目指す加計学園が手を上げた

愛媛県今治市。製造品出荷額が1兆円を超える製造業の街だが、人口減少に苦しんでいる。(撮影・矢野 宏/新聞うずみ火)

森友学園問題に続き、いくつもの疑惑が浮上する加計学園問題。安倍首相の「腹心の友」が理事長を務める加計学の獣医学部新設に、便宜を図ったのか。国政はゆがめられたのか。通常国会は閉幕したが、疑惑の幕引きは許されない。愛媛県今治市ではすでにキャンパス建設が進む。住民はどう考えているのか、現地を訪ねた。(矢野 宏/新聞うずみ火)

今治市は愛媛県の北東部、瀬戸内海のほぼ中央部に位置する。加計学園が開学を目指す岡山理科大学獣医学部の建設予定地は、市街地から車で西へ10分ほど走った小高い丘陵地にある。

キャンパス敷地(16.8ヘクタール)はAとB、道路を挟んでCとDの4区画。AとBには獣医学部棟や獣医学教育病院が建設され、Cは駐車場、Dには体育館やグラウンドなどが整備される予定だ。

建設を請け負っているのが、逢沢一郎・元外務副大臣の従兄が経営するアイサワ工業と大本組。いずれも岡山の建設会社である。

訪ねた日は日曜で工事関係者の姿はなかったが、AとBでは大型クレーンが立ち、工事が進んでいる様子がフェンス越しに確認できた。

建設地は「今治新都市」の第2地区(いこいの丘)。

都市再生機構、愛媛県と今治市の3者が本四架橋の受け皿として丘陵地を切り拓き、170ヘクタールの都市機能用地を開発。総事業費は686億円で2002年に着工。第1地区は産業用地と商業用地、スポーツパークで、第2地区は住宅用地と高等教育用地。広島・尾道市と今治市を結ぶ西瀬戸自動車道(しまなみ海道)の今治インターチェンジに接し、国道196号線も近いため、交通の便はいい。

第2地区のうち、宅地の造成・分譲などは順調に進んだが、大学誘致は難航。当初、県内の大学が新学部設置を検討していたが、03年に大学側の経営判断で中止となった。それ以後、県外の私立大学や専門学校の誘致を進める中で、獣医学部新設を目指す加計学園が手を上げたのだ。
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