道徳の教科化がもたらすものは何か、教師らにレクチャーする相可文代さん

 

戦後一貫して保守派の念願であった「道徳」の教科化。安倍政権の肝いりで実現し、来年度からは小学校、再来年度からは中学校で正式な教科に格上げされることが決まったが、その中身について、当の教育現場ではどう受け止められているのか。(新聞うずみ火/栗原佳子)

◆若い教師にも伝えたい《教科化の懸念》

正規の教科に格上げされた道徳は「要」の教科になる。かつて「修身」は筆頭教科として全ての教科を統制したが、同様に、今後はあらゆる教科や行事を、道徳と関連付けなければならなくなるという。たとえば、算数の九九は「伝統と文化の尊重」の徳目に位置づける、などというものだ。「日の丸を仰いで君が代を斉唱させ、国家の一員であることを自覚させる。修学旅行は崇高なもの、皇室への畏敬の念を醸成させるため伊勢神宮へ、職業体験は国を守る気概の育成として自衛隊、となる日も遠くないかもしれません」と相可さんは懸念する。

実際に教科書を用いる現場教師はどう受け止めるのか。大阪・吹田市の中学校で社会科を教える平井美津子さん各社の教科書を読み比べ、「読めばよむほど問題点が多い」と感じたという。

「ただ教師は本当に忙しい。普通はそこまで読みきれません。教科書があり、教えやすくなるので教科になってよかったという若い教師も多いのです」。

平井さんは先日、『教育勅語と道徳教育』と題したブックレットを緊急出版した(日本機関紙出版センター刊)。これからの道徳が、子どもたちをどう導こうとしているのか、考えてもらうためだ。
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