さいたま市が今年から参入したアスベスト健康調査において、対象区域や期間がほかの実施地域に比べて狭められている問題で環境省は対象区域の拡大について、実施可能なら「構わない」と容認する考えを明らかにした。(井部正之)

さいたま市にアスベスト検診の対象区域拡大などを求める「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」関東支部世話人の小菅千恵子さんら(8月3日、井部正之撮影)

◆市は回答を先送り

この健康調査は2005年6月末、兵庫県尼崎市の機械メーカー・クボタの旧神崎工場周辺で住民にアスベストが原因とされる中皮腫(肺などを覆う膜にできるがん)被害が判明したことをきっかけに、大規模な石綿工場のあった同市などで翌2006年から始まった。アスベストを吸ってしまった可能性のある人びとに対し、問診やレントゲン検査、コンピュータ断層撮影(CT)検査を無料で提供し、健康管理や不安解消に努める環境省の委託事業。現在では今年度参入したさいたま市も含め、全国8府県24地域まで拡がっている。

最後発のさいたま市は今年度から検診を開始している。

ところが、「日本エタニットパイプ」(現リソルホールディングス)大宮工場直近の同市中央区、大宮区に1982年以前に在住していた者だけを対象とした。しかも受診者を「先着100人」に限定。通勤・通学で工場近くに来ていた人たちも除外するなど、検診の参加者を大幅にしぼっている。受付期間も7月20日から~8月31日までと1カ月程度しかない。

こうした市の対応は受診者を不当に狭める行為だとして、被害者団体、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会(小林雅行会長)らは8月3日、同市に対し、
(1)対象区域を市内全域に拡大せよ
(2)1982年以前に在住していた住民だけでなく、当時市内に通勤・通学していた方も対象とせよ
(3)日本エタニットパイプ大宮工場の被害実態も説明の上で検診を呼びかけよ
(4)定員100人を超えても受け入れよ
──など7項目を要請した。

担当者レベルでしか対応していない市側は、改めて回答するとして、当日は要請を聞くだけに留めた。8月8日にも改めて被害者団体側が要請に訪れたが、その際も十分な検討時間がなかったことなどを理由に返答を避け、8月末までに回答することになった。
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