環境省の委託を受けてさいたま市が今年から開始したアスベスト健康調査で、同市は希望者のうち10人近くに対し「対象区域外」を理由に受診を拒否していた。(井部正之)

さいたま市保健所に置かれていた「アスベスト検診」のチラシ。同市では検診を受けることができる人の対象区域が同市中央区、大宮区の2区に限られたため、10人近くが「対象区域外」として検診を拒否されている(8月3日、井部正之撮影)

 

◆さいたま市が受診を拒否

この健康調査はアスベストを吸ってしまった可能性のある人びとに対し、問診やレントゲン検査、コンピュータ断層撮影(CT)検査などの「アスベスト検診」を無料で提供し、健康管理や不安解消に努める環境省の委託事業である。現在では今年度参入したさいたま市も含め、全国8府県24地域まで拡がっている。

最後発のさいたま市では「日本エタニットパイプ」(現リソルホールディングス)大宮工場直近の同市中央区、大宮区に1982年以前に在住していた者だけを対象とした。しかも受診者を「先着100人」に限定。通勤・通学で工場近くに来ていた人たちも対象外とするなど、検診の参加者を大幅にしぼっている。検診の受付も7月20日から~8月31日までと1カ月程度しかない。

しかし、市内にはエタニット社の下請け企業をはじめ、ほかにも複数の石綿工場が過去に存在。実際にアスベスト関連疾患による労災も発生するなど、周辺における同様の被害も懸念される状況だ。

8月4日に受診を希望した2区以外の在住者を断っていたことが判明し、「被害者の切り捨て」との反発を招いている。

同市保健所疾病予防対策課に8月18日に確認したところ、実際に受診を断ったのは「以前はお名前などをお伺いしておりませんので人数ははっきりしていませんが、5人くらいだと思います」という。
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