フセイン政権以後、クルド自治区はイラクの枠組みにとどまった。だが、シーア派が政府に強い影響力を行使し、その反発からISが台頭、イラクに戦火が広がる事態となると、自治区では「クルディスタン独立」へ向けた動きが一気に加速した。一方で、キルクークがクルド地域に編入されて独立すれば、クルド人以外の住民への締め付けが始まるのではないかとの不安の声も一部に出ている。住民投票に反対するトルクマン(トルコ系住民)と、クルド人の間で衝突がいくつか起きている。団体職員のアラム・フセインさん(36)は、「政治的な一部の人たちが起こしたことを全体としてとらえないでほしい」と言う。「自分はクルド人だが、トルクマンの友人も多いし、彼らの言葉も話せる。みんな安心して暮らしたい。それだけを願っている」。【玉本英子】

キルクーク市内南部地域はアラブ人が暮らす。通りにはイスラム教シーア派の旗がひらめき、クルディスタンの旗はなかった。イスラム教シーア派住民の多くは住民投票そのものに否定的だという。(キルクーク市内で9月24日撮影・玉本英子)

アラブ系住民が暮らす地区の雑貨店で。モスルのIS奪還戦が終了し、避難民が帰還したため、売り上げが激減、新しい商品が購入できない状態という(キルクーク市内で9月24日撮影・玉本英子)

第2回 >>>

〔イラク・クルド〕クルド独立を問う住民投票(4) 「独立賛成」でも生活に不安抱える市民
〔イラク・クルド〕クルド独立を問う住民投票(3) 自治区内2空港でイラク政府が国際線運航停止措置
〔イラク・クルド〕クルド独立を問う住民投票(2) 「独立賛成」多数~投票への様々な思い
〔イラク・クルド〕クルド独立を問う住民投票(1)~キルクーク住民の思い

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