校内に作られた音楽ホールでは、水曜コンサートに向けたリハーサルが入念に行われていた。(ウィンタートン・南アフリカ 2017年/Winterton, South Africa 2017 撮影:岩崎有一)

細かく決められたスケジュールを見ると、毎週水曜日の15時半から2時間は「コンサート」と記されている。同校の中心部には、約600席の観客席がある音楽ホールがあり、ここで毎週、合唱団によるコンサートが行われている。この水曜コンサートは、合唱のお披露目会のような位置づけではなく、前売券が販売されるれっきとしたエンターテイメントと言えるものだ。私がこのコンサートを訪ねるのは昨年に続き2度目となるが、平日昼間の開催にもかかわらず、前回も今回も、ほぼ満席となる盛況ぶりだった。観客は、南ア国内各地からだけではなく、海外からの観光客も多数見られた。

さすがに、水曜コンサートは素晴らしいものだったが、私がドラケンスバーグ少年合唱団に強い関心を抱いたのは、その歌声からだけではない。

同合唱団を形成する少年たちの人種は、白人、黒人、アジア系と様々だ。世界各地からオーディションを経て集まった合唱団であれば当然のように思えるが、その「当然のこと」を続けるためには、この国では、強い意志と理念が求められる時代があった。

南アの悪名高い人種隔離政策アパルトヘイトが終わったのは1994年のことだ。前述の通り、ドラケンスバーグ少年合唱団学校の創立は1967年。肌の色によって行動を制限される時代から、同校では、黒人少年と白人少年による混声合唱団を編成し、講演を続けてきたのだった。(岩崎有一)
続く >>

<岩崎有一/ジャーナリスト>
アフリカ地域に暮らす人々のなにげない日常と声と、その社会背景を伝えたく、現地に足を運び続けている。1995年以来、アフリカ全地域にわたる26カ国を訪ねた。近年の取材テーマは「マリ北部紛争と北西アフリカへの影響」「南アが向き合う多様性」「マラウイの食糧事情」など。Keynotersにて連続公開講座「新アフリカ概論」を毎月開催中。2005年より武蔵大学メディア社会学科非常勤講師。
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