闇市場のはずれで座り込む子どもを見つけ、近寄る。

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◆暴かれていく北朝鮮の真実

その後、チョルに続く勇気ある北朝鮮の人間が何人か出現している。韓国人ジャーナリストのキム・ヨンスン氏(私の記者仲間である)が、1999年と2000年に同じく北朝鮮人のキム・ホン氏と組んで北朝鮮内部の闇市場の撮影に成功した。

キム・ホン氏の撮ったテープには、チョルとはまったく別の時期、別の地域の闇市場の様子が捉えられていたのだが、市場の様子や排梱するコチェビたちの姿は驚くほどそっくりで、北朝鮮の飢餓が、広い範囲で極めて深刻であったことを証明する貴重な映像となった。

子どもは泥水を汲んでいた。 アン「この水は飲めないよ」

 

私はキム・ホン氏に直接会う機会はなかったが、キム・ヨンスン氏によれば、彼が決死の秘密撮影をした動機も、「あまりに多くの人が死に、あまりに多くの不幸を毎日のように目にして、北朝鮮社会がつくづく嫌になった。徹底した秘密主義のこの国の実情を暴露して、北朝鮮政権にひと泡吹かせてやりたい」

というものだったという。

キム・ホン氏の出現とも関連するのだが、チョルの中国帰還に前後する1999年初めごろから、北朝鮮難民の「質的変化」を、私ははっきり感じるようになった。1996~1998年、飢饉のもっともひどかった頃と比べると、1999年以降に出てきた人たちは、同じ飢民であっても、その意識にはかなりの差が生じているようだった。

命からがら這い出すように北朝鮮を脱出してきたボロボロの飢民の群れは、初期には食糧危機の根本原因が何なのかわからず、どうして自分たちが飢餓の急流に飲まれて死の淵に追いやられていったのか、当事者であるのに、その原因を説得力を持って説明できる人は少なかった。
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