◆中国人に失礼してはならない

「党幹部は講演で、『近年見られた、中国の投資者に対する外交儀礼に欠くような行為はしてはならないし、中国人に対して失礼不遜な態度をしてはならない』と強調していた。調べると、他の企業所でもまったく同じ内容の学習・宣伝をしている。また先日は、テレビで中国ドラマの『毛岸英』も放映した。それで一般住民は、中国との関係が良くなったので、近いうちに大きな投資をしてくれるだろうと、期待を口にするようになった」

※ドラマ「毛岸英」は、朝鮮戦争当時、中国義勇軍として参戦して死亡した毛沢東の息子・毛岸英を描いた作品。

講演では特定の人物や機関・企業の名は挙げなかったというが、ここ10数年、北朝鮮内に合弁企業を設立した中国投資家が詐欺にあったり、何らかの法律違反を口実に機械・設備が没収されるケースが度々発生し、酷い場合には、逮捕して巨額の罰金を課したあげく追放する事件まで起こり、中国当局が抗議する事例も珍しくなかった。

米国と非核化や平和体制構築についての対話が始まった今、中国の助力を切実に必要とする金正恩政権が、中国の気分を損ねないよう神経を使っていることが、講演の内容から窺える。

一方で、講演の最後には、「中国との関係が改善したからといって過度な幻想を持ってはならない。中国は、私たちの運命に責任を負うことはないのだから、自力更生だけが生きる道だ」 という言葉を付け加えるのを忘れなかったと、取材協力者は伝えている。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

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