拉致や殺害事件が多発するシリア。写真はISの前身「イラク・シリアのイスラム国」がイドリブでシリア政府軍の協力者とされた男を殺害する映像。(2013年12月)

 

それから数日後、自由シリア軍とISとの衝突があり、ISが逃げた建物から私は脱出できました。拘束した人間を次々と処刑するISでしたから、私が生きていたのは奇跡としか言いようがありません。

3人の子どもを守るためにトルコへ逃れました。しかし仕事も得られず貯金も底をつき、再びイドリブへ戻ります。そして今度はシャム解放機構(旧ヌスラ戦線)から脅迫を受けるようになりました。そのため2017年、再び国境を越えてトルコへ逃れました。

◇ほかにはどういう拉致があるのですか?

モハメッド・スルーム氏:  

私はISに捕まりましたが、これはシリアで起きている拉致や拘束事件のなかでは、数少ないケースです。同じ頃に行方不明になったジャーナリストの仲間や知識人のほとんどがシリア当局に捕まっています。しかし当局側が家族に連絡を取ることはしません。同じ刑務所にいて解放された者が家族に伝え、やっと消息が分かるのです。

人づてに「彼は刑務所で拷問を受けて死んだ」などと、よく耳にしました。しかし遺体が家族に引き渡されることは聞いたことがないので、生死も分からず、実態が明らかになりにくいのです。

武装組織の敵とみなされた者や身代金目的で地元民が狙われる。アサド政権も反体制的な市民を拘束し、行方不明も。写真はイドリブのシャム解放機構(旧ヌスラ戦線)。

 

数えきれない数のシリア人が、拉致、誘拐の標的となっています。理由は様々で、政治目的や自分たちの組織の敵とみなす者を狙ったり、単純に身代金目的の場合もあります。私たちシリア人は、いつどこで突然、連れていかれるかわからない恐怖と隣り合わせなのです。そして拉致されても、誰も助けてはくれません。(続きを読む>>

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