◆人民がそっぽ向くほど貧弱でも続けてきたのに

一方で、党や軍傘下の貿易会社のうちで、収益を上げている会社は、自前で贅沢な「祝日配給」を実施したという。調査した取材協力者が続ける。

「例えば、ウンパサン会社という貿易会社では、従業員に豚肉1キロ、化学調味料1キロ、砂糖2キロ、食用油4.8キロ、中国産のアヒル一匹を出していた。こんな待遇のいい会社で働きたいものだと羨望の的になっている」

さて、国家が手当てしてきた「祝日供給」がなくなった理由はなにか? 国際社会による厳しい制裁が続いて経済状況が悪化していることが考えられるが、それだけではない可能性がある。

金正恩政権は昨年から「タダを止める」政策を徐々に打ち出している。地方都市では公営バスや鉄道、電気料金の大幅値上げを実施した。社会主義の看板のもとで、赤字を垂れ流ししてきた公共部門で料金徴収に乗り出しているのだ。これに対して庶民の中には、「どこが社会主義だ」と反発の声もあるが、経済合理性に適った施策であることは間違いない。

人民がそっぽを向くようなお粗末な「祝日供給」とはいえ、全国民に支給するのは経費がかかる。中央に命じられた地方の人民委員会の資金調達の負担は小さくないはずだ。にもかかわらず、人民からありがたがられることもない。費用対効果から「祝日特別配給」を断念した可能性がある。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮国内に搬入して連絡を取り合っている。