◆怠慢メディアには取材求めよう

国家権力は戦場を隠し、嘘をつこうとする。だからこそ、政府発表ではない、ジャーナリズムの眼が現場に必要なのである。「外務省が退避勧告している場所に行った」という批判はまったく的外れだ。お上が行ってよいという場所、テーマしか取材しないのなら、それはもう報道機関とは言えない。そんなメディアがあれば、尻を叩かなければならない。手抜きするなと。

安田さんが赴いたシリアでは、2011年に内戦が勃発して以来、50万の死者と500万の難民が発生した。イスラム国による前代未聞の残忍行為もあって世界を揺るがせた。現場で何が起こっているのか、ジャーナリストが取材に赴くのは当然だ。組織かフリーかは関係ない。

もちろん安全確保の努力はジャーナリズム側の義務だ。2001年に始まったイラク戦争以降だけを見ても、6人の日本人ジャーナリストが銃撃や拘束の末に死んだ。安田さん以外にも取材中に拘束されたジャーナリストは大勢いる。事件事故はなぜ起こったのか、ミスはなかったのか、ジャーナリズム側が事件事故を減らすために検証に努めること。それが紛争地取材の必要性をもっと理解してもらうために、今必要なことだと思っている。

※11月6日付け毎日新聞大阪版に掲載された記事に加筆修正しました。

★新着記事