歓迎パレードに動員された人の苦痛は大きかったようだ。2018年9月(平壌写真共同取材団)

 

「文在寅(ムン・ジェイン)大統領への期待や関心は薄れてしまいましたねえ」

10月末に平壌から中国に出国してきたビジネスマンが、アジアプレスとのインタビューに応じ、開口一番、このように述べた。(石丸次郎)

関連写真:秘密カメラがとらえた平壌の統制の実態 (写真9枚)

 

――文在寅大統領の平壌訪問から二カ月。

「文大統領の平壌訪問には多くの人が期待しました。何か支援してくれるだろうと思ったからです。経済制裁の影響で金回りが悪くなって平壌の庶民も非常に苦しい。その後、何も変化がないので、韓国と文大統領への関心は薄らぎましたね。話題にもならない。日々の生活に追われていますから」

――文大統領は平壌市内をパレードし、動員された大勢を前に演説もしました。人々は好感を持ったのでは?

「私の周りには、『文在寅いいね』なんて言う人はいませんよ。そんな発言したら、捕まって死ぬことになりますから。絶対に人前では言えない」

――地方の人に聞くと、好印象持った人が多かったようです。

「平壌では、文氏の訪問期間は大変辛い思いをしたのです。街の清掃や道路の補修、歓迎動員の準備、行事の予行演習が続いてヘトヘトになりました。当初は建国記念日の99日の直後に来ると言われていたのにずれこんで、準備期間が長くなってしまった。

もうひとつ不満が多かったのは、平壌封鎖が長引いたこと。平壌は他地域から完全に遮断されて人も車も入れないようにしたので、商売上がったたりだったのです。はっきり言って、平壌の人間にとって文大統領の訪問は迷惑でした」

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