厚生労働省が2018年7月から開催しているアスベスト規制強化の検討会のようす。なお、写真は今年1月の第3回会合(井部正之撮影)

居酒屋とアスベスト除去のどちらが有害物質による健康被害についての測定やリスク評価(リスクアセスメント)がより必要だろうか。普通に考えれば、発がん性の高いアスベストを毎日扱うアスベスト除去である。なにしろアスベストによる中皮腫や肺がんなどの労働災害が相次ぎ、年間1000人近くに上るのだ。ところが、厚生労働省の答えは「居酒屋」なのである。(井部正之/アジアプレス)

◆アスベスト除去にリスク評価不要!?

「居酒屋の店員さんはリスクアセスメントが必要なのに、アスベストの除去ではリスクが高いのにリスクアセスメントいらない」

こんな指摘が飛び出たのはアスベスト規制の強化を議論する国の会合である。2018年12月5日、厚労省の「建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策等検討会及びワーキンググループ(WG)合同会合(座長:豊澤康男・労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所所長)」の席上だ。

指摘したのは日本作業環境測定協会石綿分析技術評価事業検討委員会委員/東京労働安全衛生センターの外山尚紀委員。

「(アスベスト除去の)現場たくさんみてますけど、とくに(吹き付けアスベストなど)レベル1で現場の濃度を測ることがおこなわれていない。だれも監視をしていない。作業者も自分がやっている作業でリスクがあるのか知り得ない状況にある」

現在、労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)では、アスベスト除去の際、作業現場や周辺での空気中におけるアスベストの測定義務が設けられていない。欧米では義務づけられていたり、義務づけがなくても現場の安全管理のため当然必要と考えられて頻繁に実施されているが、日本には義務規定がなく、自主的に実施されていてもその頻度はきわめて低い。しかも実施されても測定結果が出るまでに作業が終わっていることが多く、リスク管理として機能しているとはいいがたい状況にある。

外山委員はこう続けた。

「作業環境測定法では石綿にも測定義務はあるが、半年の作業以上が対象。解体現場は対象でない。リスクアセスメントは義務化されているが、石綿は禁止物質なので対象になってない。発がん物質で危険性が高く、曝露リスクが高いのに、アセスの対象から除外されている」

リスクアセスメントとは、「作業における危険性又は有害性を特定し、それによる労働災害(健康障害を含む)の重篤度(被災の程度)とその災害が発生する可能性の度合いを組み合わせてリスクを見積もり、そのリスクの大きさに基づいて対策の優先度を決めた上で、リスクの除去又は低減の措置を検討し、その結果を記録する一連の手法」と同省のパンフレットで説明されている。

労働現場でその業務の危険性について調べて、その危険性について優先順位を付けて労働災害が起きないよう対策を講じていくわけだ。

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