◆8年間で脱北者1万人が韓国入り
北朝鮮で公民証が更新されるのは、金正日氏が死亡する直前の2011年夏以来。その後、脱北者、行方不明者、居住地を離脱した人など、「動態把握が困難な住民」が大量に発生し、金正恩政権は住民統制のため登録事業に注力していた。ちなみに2011~2017年に韓国に入国した脱北者数は1万人を超えている。

平安北道に住む別の取材協力者は、次のように言う。
「2018年は、保安署が人民班を通じて人口調査をずっと行っていた。それは名目で、脱北者など、住民一人ひとりの動態を調べるためだ。保安員が人民班長とともに家庭訪問して『住民台帳』と照合するのだ」

2017年、北朝鮮政府は国連人口基金(UNFPA)と共同で総人口調査をする計画を立てて財政支援を求めた。UNFPAは韓国に600万ドルの拠出を要請、韓国政府は支援を決めていた。だが、金正恩政権が2017年に核実験や長距離弾道ミサイル発射実験を繰り返し、国連安保理の経済制裁もあって、拠出を留保したままになっている。

金正恩政権としては住民統制のための資金の当てが外れた格好で、さらに経済制裁によって2018年に入って統治資金調達が打撃を受け、大幅な遅延を余儀なくされたとみられる。新公民証は電磁カードになるという噂もあるが、まだ確認できていない。

取材協力者が会った保安員は「交付が完了できたら、3月に最高人民会議の代議員選挙を実施すると、昨年末に党内部の方針が伝達された」と述べたという。

※人民班は末端の行政組織で戦前の日本の「隣組」に類似。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

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