(参考写真) 平壌中心部に向かう地下鉄の検問。「出て行きなさい」と、兵士は慇懃だが断固とした口調で小さな背嚢を持った男性を駅構内に入れようとしない。2011年6月に平壌市大城区域にて撮影ク・グァンホ(アジアプレス)

◆3月10日に「選挙」予定、投票場の破壊を危惧

厳戒態勢に入ったのにはふたつの理由がある。一つは言うまでもなく、金正恩氏がベトナム訪問中に、国内で不測の事態が起きないよう警戒してのことだ。脱北事件や軍人の不良行為、殺人などの重大事件が発生して国際社会で報道されると、体面が傷つくばかりでなく、国内が不安定であるという印象が世界に広がりかねない。もちろん、万一にも反体制的な行動が起きないようにするためだ。

ふたつ目は、金正恩氏がベトナムから帰国して間もない3月10日に、国会に当たる最高人民会議の代議員選挙が予定されていることだ。北朝鮮の選挙は「100%賛成」が常の、まったくの形式に過ぎないが、政権が「人民の支持」という虚構のシステムを維持・宣伝するために欠かせない重要行だ。

最高人民会議代議員の「任期」は5年。2014年には、選挙場(投票場のこと)の破壊や落書き事件が各地で発生し大問題になった。「選挙場」の看板が夜間に「逝去場」と書き直される事件もあった。

2月18日に電話で連絡を取り合った咸鏡北道(ハムギョンプクド)の協力者は次のように言う。

「毎日、人民班単位で選挙場の警備をやらされている。選挙の日まで1分たりとも警備の空白を作るなと、地方政府と党の幹部が交互に投票所を訪れ確認している。選挙の1カ月前から、こんなに厳しく警戒するのは初めてだ。見張り、見張られ、動員されて、住民はうんざりしている」

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。