「夜は真っ暗闇。ずっと1秒も電気が来ていない。政府機関の電気を、別の電線を密かに繋いで盗んだり、賄賂を払って回してもらったりする住民もいる」

両江道と咸鏡北道の複数の協力者はこのように伝える。賄賂は一月に2万ウォン(約270円)ほどだという。

水力発電への依存度が7割に及ぶ北朝鮮では、冬季に電力事情が悪化するのは毎年のこと。しかし、1秒も来ない「絶電」状態は、この2年ほどの間に発生している。

昨年は年初から「絶電」状態に陥っていたが、6月末頃から突然改善されて一日に10時間ほど供給されようになり、住民たちを大いに喜ばせた。ある韓国政府関係者は「金正恩氏が習近平氏と会談した後、中国が無償で電気供給したと見られる」と、昨夏コメントしていた。

ところが、10月に入って再び北部地域一帯で住民への電力供給がストップした。金正恩氏肝いりの三池淵(サムジヨン)地区の観光地開発工事に電力を集中させたからだった。それ以来、現在まで北部地域では「絶電」が続いている。

「盗電」の横行によって、政府機関や産業施設の運営に支障が出ている上、漏電による火災事故も多発し、当局は特別取り締まり班を編成して、不法電気の使用根絶を目指しているが、幹部のコネや縁故を使っての「盗電」が後を絶たず、さしたる効果は上がっていないという。

北朝鮮地図 作成アジアプレス

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