◆信頼回復のため徹底した対策を

市は「そういう工事発注はしていない」(同)というから、もしその回答が正しいとすれば、不適正なアスベスト除去だったと解するほかない。

また市は「解体時に改めて煙突内のアスベスト除去工事を実施する」(同)方針で、費用負担について「施工業者と協議中」(同)というから明言はしないが不適正との判断はあるのだとみられる。

堺市の煙突問題は、工事が適正に完了したかを確認する「完了検査」について労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)や大気汚染防止法(大防法)などのアスベスト規制に位置づけがないことが課題といった指摘もある。

しかし、会計法や地方自治法で「契約の適正な履行を確保するため必要な検査・監督をしなければならない」と定められており、国や自治体は工事の適正な履行を確認する義務がある。アスベスト除去工事が始まった約30年前以来ずっとそうした義務がありながら、国や自治体はきちんとした完了検査の基準を定めてこなかった。法をきちんと履行してこなかったのである。

こぶし大のアスベストが現場に残されていても工事が不適正だと判断できないようでは話にならない。

堺市は2016年6月、2017年3~4月と2度にわたった不適正工事を教訓に今後適正な法の履行を確保するための体制整備をしていく義務がある。そこにどうつなげるのか。

市は「そういう問題意識はある。まず勉強していかないとわからない(判断できない)。勉強して検討していきます」(同)と答える。今後の除去工事の際、同協会に工事監理を委託し、現場でノウハウを教えてもらうとともに、研修会を実施するなどして技術レベルの向上に努める方針という。

2度の不適正工事で地に落ちた信頼を回復するため、市は今後徹底した対策を講じることが求められる。

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