◆ 市が勝手に報告書「収受」遅延

今度は提出された資料を「保有」しているが、「取得」ではなく「借用」のため、公文書には該当しないと主張する。

これもおかしな話である。

もともと今回の再調査は、調査の不備の指摘を受けて市が実施を決めたものだ。だが市によれば、調査者協会は元請けのダイナ建設の下請けになっているのだという。その結果、調査者協会が作成した調査報告書は同社に対して提出されている。

形式的に「下請け」のため、調査者協会から「元請け」のダイナ建設宛てに報告書が提出されるのは当然のことだ。その報告書が同社から発注者である市に対して提出されることもごく当たり前の手続きである。発注者たる市が当然手にしているべき報告書をなぜ借用する必要があるのか。

「なぜ借りているかはお答えしかねる」(法制文書課)

では現段階で「正式に提出」されず、市が「借用」しているのはダイナ建設側に提出できない事情でもあるのだろうか。あるいは正式な報告をおこたっているということなのか。

ダイナ建設に事情を尋ねたところ、「調査者協会から報告書をいただいたのが3月下旬。現場の代理人と内容を確認しまして、4月上旬ごろ、守口市のほうに報告書のコピーを渡した」と説明した。

報告書が現段階では正式に提出されていないと市が主張していることを伝えると同社の担当者は驚いたようすだった。市に対して報告書を「正式に提出」できない理由が同社にあるのか聞くと「いえ、ないですよ」と否定し、こう証言した。

「(報告書を直接市に提出すると)市が公印とか色々あるのでダイナ(建設)に渡してくださいとなった」

また同社はこうした経緯で報告書のコピーを市に提出しており、同社が報告書の「正式な提出」をおこたっている事実はないと否定する。

つまり、報告書を受け取って公印を押したくない市側の都合で形式的に調査者協会をダイナ建設の下請けとさせ、直接市宛ての報告書として提出させないことになったというのである。

市宛ての報告書では、市に受け取り義務が生じてすぐ公文書となってしまう。一方、元請けに対してしか正式に報告されていないとすれば、受け取っていない、借りているだけなんだと言い訳できる。そんなへ理屈で誤魔化そうとしていたのである。

市財産活用課に書面で確認したところ、「事前調査は、法令上、工事受注者が実施することとされており、ダイナ建設から建築物石綿含有調査者協会に委託された。今回の調査に係る報告書は、最終的に工事発注者である守口市に提出されるものであるため、ご質問のような意向はございません。なお、守口市に提出後は、守口市情報公開条例に基づき取扱われるものです」と木で鼻をくくったような回答があった。

すでに述べたようにダイナ建設はすでに報告書を提出したと説明しており、市はそれを受け取っていることを認めているにもかかわらず、市側の都合で勝手に「借用」と解釈しているにすぎない。しかも同社は「公印とか色々ある」との市の意向により同社を報告書の受け取り先にしたと証言している。

結局のところ、市は否定したが、市側の都合で自ら定めた文書取扱規程をねじ曲げ、すでに提出された報告書を「借用」と称して「収受」手続きをせず、公文書になることを意図的に遅延させて、情報公開の対象から除外する“隠ぺい工作”に手を染めたといわざるを得ないのではないか。

財産活用課の“隠ぺい工作”は論外だが、市宛てではない文書であれば「借用している」と主張すれば、「条例にも公文書にも当てはまらない」と市の文書取扱規程をねじ曲げる解釈を認めてしまった法制文書課の対応も重大な問題をはらんでいる。

当初の説明通り、そうした運用は規定違反だと明言していれば、あくまで財産活用課のずさんな文書管理というだけで済んだ。ところが、法制文書課は当初の主張を維持できず、「公文書逃れ」というべき市の文書取扱規程における“抜け穴”利用を認めてしまい、文書管理の担当部局としての自浄能力がないことを示してしまった。

今回の情報公開をめぐる守口市の一連の動きからは、アスベスト対策における市の「誠意のない」対応ぶりが改めて明らかになっただけではない。同市でこうした「公文書逃れ」が日常的に行われていると受け取られかねない行政対応であり、きわめて深刻な事態である。これでは同市は文書取扱規程を持っているにもかかわらず、適正な公文書管理をする能力のない、行政として基本的な事務手続きすらまともにできない、情けない自治体といわれても仕方あるまい。

今後、市はアスベスト対策を改めるだけでなく、「公文書逃れ」を認める運用を撤回し、規定改訂に臨むなど、汚名返上ができるのだろうか。

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