◆アスベスト飛散に禁止・罰則なし

今回はわずか10平方メートル弱(フレコン2袋)と少量だったことで廃掃法による対応の厳しさが際立っているが、量が多くても、大防法で野放しとなることは同じである。

何度も指摘していることだが、大防法や石綿則では作業時にスレートなど、いわゆる「レベル3」に分類されるアスベスト含有建材を破砕することを禁じる規制どころか、アスベストをいくら飛散させて周辺の人びとに吸わせても罰則すらない。当然ながら作業時のそうしたずさんな方法について、仮に証拠や証言があったとしても法的執行は不可能なのが現状だ。

そのため形だけ指導して終わりである。下手をすると通報されても行政が現場に行かない事例すらあるほどだ。

さらに大防法や安衛法のアスベスト規制に違反しても、罰則は最大で6か月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金でしかない。大規模工事だと数十億円にも達するアスベスト除去工事で、手抜きをして周辺にいくらアスベストを飛ばしても罰せられず、仮に罰則が適用されたとしても最大50万円程度では痛くもかゆくもない。

スレートなどの「レベル3」建材はセメントなどでアスベストが内部に固定されているため、劣化がなく、割ったりしていなければ問題はない。だが、割ってしまうと、固定化されたアスベストが遊離し、最小で髪の毛の5000分の1もの細さの目に見えない繊維となって空気中に飛散する。それを吸うと数十年後に中皮腫などを発症させる場合がある。そんな「キラーファイバー(殺人繊維)」とも呼ばれる発がん物質の対策として考えれば、飛散させる行為は直接的に発がん物質をばらまくことにほかならない。半ば無差別テロのような危険な行為といえよう。

だからこそ事前調査が重要となる。建物改修・解体において事前にきちんと調査していなければ、アスベスト建材は適切に特定できず、作業時に割ってしまったりしてアスベストを飛散させる可能性がある。

土砂と混ざり、とりわけ飛散している状態ではない廃棄物となったアスベストではこのように少量であっても厳しい法的措置がなされる。ところが、直接アスベストを飛散させる危険な行為や、そうした行為につながる事前調査の義務違反でも罰せられない。これはさすがに異常ではないか。

現在検討中の大防法の規制強化では、かろうじてレベル3建材が大防法の規制対象となるが、調査義務違反の罰則追加は改正方針に含まれていない。ましてや厳罰化についてはそもそも当初から検討対象から除外されている。これでは届け出された除去工事でさえ、4割超でアスベストを飛散させている現状は変わるまい。

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