ガザの海で遊ぶ女性と子ども(ガザ地区:2019年:古居みずえ)

◆汚染に悩むガザの海

かつてリゾート地だったガザでは、人々の夏の唯一の楽しみは海水浴だった。しかし近年、ガザの海は、水質汚染問題に悩まされている。

2006年、パレスチナの評議会選挙が行われ、イスラム組織のハマースが勝利し、翌年、内紛を経て、ガザ地区の政権を握った。イスラエルはハマースを対等の政治パートナーとは認めず、ハマースを選んだガザ住民に集団懲罰としてガザ地区を封鎖した。人の出入りを制限し、また燃料などの流通を大幅に制限した。ガザの人々はそのために電気は1日4時間(現在はおよそ8時間)ぐらいしか来ず、水も1週間に数回しか来ないという状況がある。

汚染されたガザの海(ガザ地区:2018年:古居みずえ)

2018年2月、パレスチナ自治政府は10年以上にもわたるイスラエルの封鎖により、燃料不足のために、下水を処理できず、そのまま海に放出すると発表した。毎日、およそ10万立方メートル以上の下水が、ほぼ未処理のまま海に垂れ流されている。今や海水の8割が汚染され、ガザの人々はビーチでの遊泳は禁じられている。

2009年の夏、私は子どもたちの海水浴について行ったことがある。2008~09年1月、イスラエルの攻撃で、ガザ地区ゼイトゥーンでサムニ家の一族から26人の犠牲者が出て、子どもたちは親や兄弟を失った。半年後の状況が落ち着いたころ、子どもたちは海水浴に出かけて行き、私も同行した。

そのころでさえ、ガザの海水はきれいでないことを聞いていた私は、大丈夫かという思いがあった。子どもたちはそんなことはかまわず、海を見て、走り寄り、中に入ると狂ったように遊び始めた。あまりのはしゃぎようにあっけにとられたが、子どもたちがイスラエルの攻撃を受けている間、どれだけ苦しい日々を送って来たか、解放されたように遊ぶ子どもたちの姿をみながら複雑な思いがした。

海辺ではしゃぐサムニ家の子どもたち(ガザ地区:2009年:古居みずえ)

◆汚染されても海へ

2019年の夏、海に行くと数人の人たちが海辺で泳いでいた。近づくと女性たちが子どもを連れて中に入っていた。泳ぐというより海水に浸かっているという感じだ。泳ぐ人たちの数は圧倒的に減っているが、それでも泳ぐ人が後を絶たない。

「みんな我慢している。でも毎日、40度に近い気温で、子どもたちが我慢することができないんだ」
と女性の1人が教えてくれた。

泳いだあとで下痢をしたり、熱を出すなど子どもたちに健康被害も出ている。封鎖のためにガザ地区から外には出ることのできない子どもたちにせめて、きれいな海で海水浴を心いくまで味わってもらいたい。

ガザの海で、女性と子ども(ガザ地区:2019年:古居みずえ)