福井・若狭湾沿岸は日本有数の「原発銀座」とも呼ばれる。(映画「40年 紅どうだん咲く村で」より)

◆電気考えるきっかけに

印象に残るのは、大飯原発3・4号機再稼働協力要請のために当時の経済産業大臣が福井県入り、再稼働に反対する人たちが県庁に殺到、もみ合う場面だ。抗議する多くは県外の電力消費地からの人たちで、地元の反対住民ということで松下さんは抗議の最前列に押し出される。

その後、県庁の職員に(彼らを)どうにかしてくださいと言われた松下さんだが、「僕らの知らん人ばっかりやから」と答える。それは県外の反対運動と協力しながらも、一線を引いているようにも見える。松下さんにとっては「原発廃止」が最終目標ではなく、地元住民として、「その後」のことも考えていかなくてはならない。

原発や核廃棄物処理施設の受け入れと引き換えに、過疎や財政難にあえぐ地域に雇用をもたらし、財政・経済効果が大きいとして立地を認めさせてきたのが日本の原発政策だった。そこに電力会社、関連企業、政府、自治体、地元政治家らが原発ムラという構造を作り上げてきた。私たちが当たり前のように消費する電気についても考えるきっかけになれば、と岡崎監督は話す。

原発立地や再稼働をめぐり、地元は揺れてきた。(映画「40年 紅どうだん咲く村で」より)

「日本では過疎の町に原発が建てられることが多く、雇用などにお金を落とすことで、住民たちは受け入れてきました。若狭湾沿岸地域もそうです。それが福島第一原発事故のようなことが起きれば、苦しみが地元住民に降りかかる」。

「私たちが使う電気の先に何があるか、そこにも目を向けてほしい。緑豊かな町の美しい山並みを背景に映し出される、松下さんを通して、原発立地地域の現実を知ってほしい」。

「紅どうだんツツジ」を植え続けてきた松下照幸さん。(映画「40年 紅どうだん咲く村で」より)

松下さんは原発に代わる自立の道を模索する。それが地元の特産物になり得る、希少な樹種「紅どうだんツツジ」を植え続けることだ。そして原発に代わる自然エネルギーを求めドイツへ視察に向かう。彼の故郷への思いと行動力は、次第に町の人びとになくてはならないものになっていく……。

ドキュメンタリー映画「40年紅どうだん咲く村で」(岡崎めぐみ監督)は2月22日から神戸・元町映画館上映を皮切りに、京都、大阪の映画館にて上映される。その後、各地でも上映予定。

映画「40年 紅どうだん咲く村で」

●神戸・元町映画館(078-366-2636)2月22日(土)~28日(金)※22日10時30分の上映後、トークイベント(登壇:岡崎監督、松下照幸さん、神戸の市民グループ)
●京都みなみ会館(075-661-3993) 3月13日(金)~19日(木)
●大阪・シアターセブン(06-4862-7733) 3月14日(土)~20日(金・祝)

監督・岡崎まゆみ
2001年、映画監督・原一男氏が主宰するOSAKA 「CINEMA塾」に参加。その後、ドキュメンタリー映画、商業用、展示ビデオなどを手掛けながら、ドキュメンタリー映画製作の現場に携わる。原一男監督の「ニッポン国VS泉南石綿村」(2017)の制作・編集スタッフとして参加。大阪芸術大学非常勤講師。

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