大学への進学を目指すフセイン君は夏休みも塾へ向かう。日中の気温は40度近くになるため人通りも少ない。(8月23日・イドリブ市内・撮影:ムハンマド・アル・アスマール)

◆戦時下の日常

内戦の影響で、イドリブには電気は供給されていません。多くの家庭にはソーラーパネルがあり、そこから車のバッテリーに充電して、部屋の照明や携帯の充電、冷蔵庫などに使います。今は夏なので、日差しも強く、そういう日は母が急いで洗濯機をまわしたりします。今、イドリブの気温は昼は40度近くなり、扇風機がないと、もうフラフラです。

イドリブには電気が供給されておらず、多くの家庭が、ソーラーパネルで電気を得ている。1枚あたり日本円換算で3500~6500円。(8月23日・イドリブ市内・撮影:ムハンマド・アル・アスマール)

週に1回、公共の水道管から水が出ます。でもそれでは十分ではないため、給水車から水を購入します。1000リットルごとに4000シリアポンド(イドリブの現在のレートで換算:約200円)で販売されています。生活の厳しいイドリブの住民にとってはこの金額は安くないです。だから、この暑さでも僕がシャワーを浴びるのは週に1回だけです。

電気が足りないので、テレビはあまり見ません。家ではスマホでユーチューブをよく見ます。情報や知識を得られそうなものがメインですが、コメディとかのお笑いも大好きです。ファンじゃないけどK-POPも知っています。

ソーラーパネルから車のバッテリーに充電し、それを家の電気につなげる。(8月23日・撮影:イドリブ市内:ムハンマド・アル・アスマール撮影)

新型コロナ感染者がイドリブで出たと聞いています。今のところ、僕の家族は誰も感染していません。混雑した場所を避け、手はよく洗いますし、マスクをするときもあります。友達と会いたいのですが、コロナの影響で頻繁には会えません。時々、公園やプールに一緒に行きます。友達とは勉強のことや、戦況について話したりします。そして知り合いの誰かが死んだという話を聞いたりすると気が滅入ります。

カフル・ナブルでの反体制派の集会。当初はアサド政権の独裁に対し、自由を求める市民運動が主流だったが、内戦長期化で宗教色の強い武装組織が反体制派内で影響を拡大。(資料ARCHIVE:2018年・反体制派系イバア通信映像)

イドリブ南部カフル・ナブルでのシリア政府軍による爆撃。フセイン君は家族とともにカフル・ナブルからイドリブ市に逃れてきた。(資料ARCHIVE:2019年・反体制派系イバア通信映像)

◆戦争で奪われた青春

僕と家族は、もともとカフル・ナブルという町に住んでいたのですが、そこは去年、アサド政権軍による激しい攻撃があって、僕たちは家を捨てて、イドリブ市に逃げてきました。空爆や砲撃のなか、学校や市場に行くのは本当に怖かった。忘れられないのが、家の近所をロシア軍の戦闘機が爆撃して、建物が徹底的に破壊され、10人の民間人が殺されたことです。救出する民間防衛チームも遺体を見つけることができなかった。その際、僕の親友も亡くなりました。ほかにも、いとこや友人を何人も失いました。つらすぎます。僕たちの町を戦闘機で破壊したアサド大統領には職を辞してほしい。

イドリブではシリア政府軍と反体制派との戦闘が繰り返された。2015年、反体制派が中心部を制圧。(資料ARCHIVE:2015年・反体制派メディア、ムシュカット公表映像)

内戦が始まったのは僕が小学生の頃からだから、ずっと戦争でした。高校生って人生で一番ぐらいに楽しい時期のはずなのに。本当にくやしく、悲しいです。日本の若い人には、空爆下の暮らしを想像できるかわかりませんが、僕たちには平和な国がうらやましい。シリアが早く平和になる日が来ることを願うばかりです。

イドリブ一帯ではシリア政府軍と反体制派との攻防が続く。写真はイドリブ東部で前線防衛にあたる国民解放戦線。(資料ARCHIVE:2020年8月・国民解放戦線公表写真)

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