いよいよ就任式まで、あと1週間に迫った。総統選挙の票の数え直しという間の抜けた作業が始まったが、市内の情況は水を打ったように静かになっている。南米諸国を中心に元首が15名、米国政府ならびに日本の自民党代表の出席も決まり、市民が外向きの顔をし始めたからである。面子第一の民族性がこうしたところに発揮される。(写真:総統府前で選挙無効を訴える人々。その背後に、中国国民党本部ビル。)
就任式の妨害を放言していた野党党首も、足元からも批判を浴びるようになって、発言を控えるようになった。馬英九市長が、整然と式をおこないたいという意向を明確にしたのも大きい。なにより、台湾は豊かである。誰も事件、事変を望んでいないのである。
就任式が平穏におこなわれる見通しとなって、馬市長の動向に改めて関心が集まっている。陳総統からの招待を受けるかどうか。国民党副主席の肩書きも持つ市長は、この間、国民党主席の連戦や親民党主席の宋楚瑜らと一線を画す姿勢をしだいに見せ始めている。この2人をおいてきぼりにして、自分だけ就任式に出席すれば、馬時代の到来を暗示させるものとなる。市長はこのタイミングが正しいかどうか、最後まで情勢を読み続けるだろう。
総統選2連敗、「選挙無効」抗争の不人気、そして正副主席の対立を背景に、中国国民党は動揺し続け、とつじょ財政窮乏を理由に党職員の75%を首切ると宣言したりする。職員のほうは、連戦主席のほうこそ責任をとってやめるべきだと息巻いている。当たり前である。
中国国民党が台湾で生き残るためには、本来なら、解党的決意が必要だ。が、それは相当に複雑な工事が前提となろう。国民党は、「党=国=軍」を前提に作られ、機能してきた政党である。中華民国の国旗にも軍隊の徽章にも党のマークが入っている。国歌ももとは党歌だと言われている。党の財産も国民の財産も区別がつかない。総統府前にそそりたつ党本部ビルまでもが国に返還するように迫られている有様だ。このような党が存在していること自体が台湾民主主義の汚点なのであるが、この党の解体は、虚構の中華民国の解体に波及する。
党改革をいったいどこからどう手をつけるか、まずは年末の国会議員選挙の結果待ちの気配である。このままでは、国民の厳しい審判が下されかねない。
市民は揺れ続ける党本部を複雑な思いで見やりながら出勤を急いでいる。
(04年5月12日)



