カシミール(インド側)で6年来の友人の結婚式に出席した。この結婚、お見合いが常識のカシミールでは珍しい恋愛結婚である。2人は地元銀行に勤める銀行員で、4年ほど前に同じ支店で働いていた時にお互いを見初めあった。友人側(新郎)の家族は問題なかった。
親しみやすい性格の新婦に家族はすぐに打ち解け、家族同然の付き合いが始まった。だが、新婦側の家族は猛反対。
彼女の家は医者や実業家などの家系で、中流階級である彼の家とは家格が違うというのだ。また、彼の住んでいる地域もまずかった。その辺りは90年代初頭、ゲリラの強力な支配地域で、ゲリラだったのではないかと疑われたのである。
結局、あいだに何人もの人が入り新婦側を説得し、ゲリラの疑いも晴らした。また彼女も「彼としか結婚しない」と、両親と相当やりあい、頑張ったらしい。
そして、2人は今秋、晴れて結婚ということになった。まあ、こちらはめでたし、めでたしということでよかった。実はこの友人の妹も同時に結婚することになっていた。だが、直前で取り消しとなってしまった。花嫁側が花婿側に渡す“ダウリ“と呼ばれる結婚持参金の問題が持ち上がったのである。最近になって相手方の父親から「車を買うように」と要求されたのだという。これが少ないと嫁ぎ先でいじめにあい、それを苦に自殺するケースも少なくない。
他の友人によると「基本的にあれはヒンドゥーの慣習なんだ。そりゃ、カシミール(マジョリティはムスリム)でも自分のほうからいくばくか持って行くことはある。でも要求されるのは違うだろ。
僕の姪も車を買えと言われたんだ。そのときは要求に応えたよ。でも、結婚してからしばらくして、今度はその兄弟がアメリカでビジネスを始めるからその旅費を出せっていうんだ。もう冗談じゃないと思って、別れさせたよ」
友人の妹もまた相手の男性から、デリーに行く用事があるからお金を出して欲しい、とも言われたそうだ。
彼女自身、最初からこの結婚には乗り気ではなかった。相手の男性(職業はコンピュータ技師)と性格が合わないというのだ。
「私は外に出るのが好きな性分なのに、彼は休日でもコンピュータの前に座りっぱなしなのよ。それに、会えば私の服のセンスが悪い(彼女は服飾デザイナー)、何が悪いって、ネガティブなことばかり言うのよ」
あまりに不安に思った彼女は、ある日、私に知り合いの占い師を紹介して欲しいと頼んできた。
占いは手相や名前の画数、生年月日などをもとに行われ、結果は大吉。占い師さん(実は地元では高名な民俗、宗教学者)は「何を心配しておるのだ。あなたの心の持ちようが、あなたの心を不安がらせているだけなのだ」と太鼓判を押した。
帰り道、なぜそんな意に添わない結婚を承諾してしまったのかと私は尋ねた。彼女の家で相手の男性が彼女の姪や甥と電話で話すのを何度も聞いており、私には男性が子供好きの好人物に写っていた。
彼女は「私はもうこんな歳(34歳)だから、兄たちが賛成した以上、これといった理由もないのに断ることなんてできないのよ」と嘆息して答えたものだった。
結局、家族で相談した結果、こんな結婚で彼女は幸せになることはできない、といって断ることになったのだと言う。僕が「うまく結婚中止になってよかったじゃないか」と言うと「しっ!そんなこと誰にも言っちゃだめよ」と彼女は半分真顔で答えた。
とにかく、彼女はいま結婚のプレッシャーが無くなって幸せそうである。「こんな歳なのに結婚してくれる相手がいないの」と嘆くそぶりは見せているが、その気がないのは明らかだ。男も女も結婚しないと一人前と認められないこの社会で“結婚しない女“をどれだけ貫けるかはわからないが・・・。
(9月24日)

恋を成就し、結婚にこぎつけたふたり。おめでとう。

結婚を祝って夜通し、歌と踊りに明け暮れた。

披露宴で、カシミールの伝統料理”ワズワン”を食
べる出席者たち。一つの皿をみなで分け合うこと
によって、連帯感を高める。日本語で言えば「同じ
釜の飯」である。




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