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| 会場全体風景。この日の来場者は約70人 取材・撮影 中平真由果 | |
昨年10月、東京都教育委員会(以下:都教委)が「卒業式・入学式に関する通達・実施指針(通称10・23通達)」を都立・区立・公立学校へ配布してから間もなく1年が経過する。国歌斉唱時に起立・斉唱をしなかった教員たちは、学校長からの「職務命令」に従わなかったとして戒告(減給も含む)などの処分を受けた。異論を唱える者に容赦なく処分を振りかざす都教委の一方的な態度は今、子どもたちと保護者にも影響を及ぼしはじめている。
10月11日、文京区の文京シビックセンターで『「ならずもの」都教委はハタを振る〜10.11意思表示の会』(主催:「日の丸・君が代」強制反対の意思表示の会)が開かれた。会場には、「君が代」ピアノ伴奏の拒否で処分され、現在裁判をしている教員のほか、今春の入学式で、教員の大量処分に触れた祝辞を述べてPTA会長を辞任させられた男性が報告者として出席し、約60人の来場者が耳を傾けた。
ピアニストの高橋聡さん(35)は、今年の4月まで中野区内にある小学校でPTA会長を務めていた人だ。祝辞挨拶の中で教員の大量処分について触れるかどうかを迷ったという高橋さんだったが、式場に漂う威圧感を異様に感じたことから「今、この瞬間が問題提起をするには一番ふさわしい場なのではないか」と判断し、以下の祝辞を述べたのだった。
「私は日の丸・君が代に関する都教委のかたくなで強権的な態度には賛成できません。教育は、このような強権的な処分をちらつかせた脅しや、個人の尊厳を無視した押し付けとは共存できるものではありません。私たちは、例え日の丸・君が代自体を国旗国歌として認めるかどうかの立場の違いはあっても、自由であるべき教育の場を、強権的な規則の押し付けから守る事には共同すべきだと考えます。このような押し付けから、本校が無縁である事、また、本校の子供たちが将来に渡っても、内心の自由を傷つけられるような事態にならない事を心より願います(祝辞一部抜粋:原文のまま)」
式終了後、すぐに高橋さんのもとには学校長だけでなく、同じPTA役員から「思想的に偏った印象を与えた」などとの批判が寄せられた。
「私は子どもの内心の自由を尊重するつもりで話しをしたのであって、まさかそれが頭ごなしに否定されることになろうとは、予想外のことでした」
その後、PTA役員会議そして学校評議委員会の場で祝辞挨拶の内容を問われ、会長就任からわずか半月で辞任に追い込まれたのだった。
PTA会長を辞任させられたことに対して、高橋さんを支援しているメンバーが学校側へ面会を求めたが、学校長はこれを拒否した。中野区の教育委員会にも面会を申し入れ、学校を適切に指導するよう要求するが、区教育委員会側は「確認ができていない、分からない」と高橋さんらの要求を退けたのだった。
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| 「自分の頭で考える、それが自立した市民というもの。間違っていることは間違っていると、堂々と表明できるような社会でなければいけないと思う。そのためにも、今回のことはきちんと追求していく」。高橋聡さんは、集会でこう語った。 | |
「この出来事を経験して思ったことは、本当に日本という国が封建制というか、お上には従うというような体質が染み付いているのだなということを実感させられました。学校や教育委員会に物を言うということが、とんでもないことだという考えが蔓延していて、そのような考えが圧倒的多数を占めているのだな、と。これは子どもが学校へ通うようになってから、改めて感じたことです。ただピアニストとして暮らしているだけでは、気づかなかったことでした」
入学式の挨拶以降、高橋さんのもとへは保護者からも「学校の評判を傷つけた」などとの批判的な意見が多数寄せられた。高橋さんは、その批判の多さに「自分の考えが間違っていたのだろうか、物議をかもすような発言をするべきではなかったのではないか」、「これ以上この問題に踏み込むのを止めれば、私の周辺にいる人々は安堵するのかも知れない」と考え、一時期悩んだとも話した。
高橋さんは、一連の出来事の結びとして、
「今、日本中が得体の知れない大きな渦のようなものに押し流されているような風潮があると思うのですが、少しでもこの流れを食い止めるような姿勢でいたいなと思っています。例え、少数派であろうとも、ひとりの音楽家として自分の感受性を信じて、その内面を表現するという芸術家、表現者である以上は、当然のことではないかと思います」
と、語った。
東京都の教育現場では今、地方公務員である教職員の「内心の自由・表現の自由」を縛るだけでなく、生徒・保護者の権利をも奪いかねない事態が生じている。
(中平真由果)





