<イラン核騒動は米欧によるいじめだ>
その1 核騒動は米欧による情報操作といじめだ 〜イランの言い分を考える〜
2月初旬、テヘラン市街の公園では早くも花壇の植え替え作業が始まっている。市がせっせと花壇や街路樹の根元に堆肥を施し、花々とともにノールーズ(春分の日に始まるイランの新年)を迎える仕度を始めているのだ。私が通う大学院でも、どこからともなく堆肥の香ばしい匂いが漂い流れ、春を迎える準備が進められているようだった。
前期試験が終わったばかりの閑散としたキャンパスで、偶然クラスメートのひとりハサンと出くわした。彼は私を見ると、にやりと笑って口を開いた。
「サラーム、元気か? 昨日、日本は賛成票を入れてくれたなあ。日本人ってのは、ちょっと昔に原爆落とされたこと、もう忘れちまってるのか?」
昨日2月4日のIAEA(国際原子力機関)の緊急理事会において、日本を含む27カ国がイラン核問題の安全保障理事会への付託に賛成票を投じた。「安保理への付託」という言葉が、三年前のアメリカによるイラク開戦に道を開いた安保理決議1441を連想させるように、この言葉はこれまで数年にわたってイランへの脅し文句であった。それがとうとう現実になってしまった。もちろん、そこで即イラン攻撃が審議されるわけではない。まずは経済制裁からじわじわと始まることになるだろう。いずれにしても、これまでIAEAの枠内の問題であったイラン核問題が、安保理という国際舞台で料理されることになったのは、イランにとっては致命的である。IAEAでの協定は決して義務ではないが、安保理での決議は、違反すればすなわち国際法違反として制裁の対象となる。
「いいや。日本人は原爆を落とされたことを忘れてはいないよ。戦争を早く終わらせるためだったとアメリカは言うけど、結局は実験材料にされたんだ。それは一つの歴史的事実として忘れないけど、いつまでも恨んでいたって仕方ない」
私がそう言うと、彼は鼻を鳴らすようにこう答えた。
「そうだな。それに、原爆2発も打ち込まれて戦争にも負けて、国は米軍基地でいっぱいだけど、最後は経済で勝ったんだしな」
彼が言いたいことは分かっていた。この世界には正義もくそもない。アメリカの言いなりになって繁栄するか、逆らって潰されるかだ。どんなにイランが正義を唱えようと、西側のメディアが伝えるのは、世界の秩序を守るアメリカが、ならず者のテロ国家による核兵器入手を懸命に阻止しようとしている、という構図ばかりである。
イランの石油事情
ハサンは続けた。
「イランは核エネルギーの技術を獲得する権利がある。核兵器が欲しいって言ってるんじゃない。どうしてイランだけが持っちゃいけないんだ?イランの石油はあと40年ほどで枯れてしまう。天然ガスはまだたっぷりあるけど、石油はできるだけ節約していかなければならない。そのためにも原子力発電が必要なんだ」
イランにおける石油の埋蔵量は、1999年時点で930億バレルとされている。採掘量は1日379万バレルほどなので、単純計算すれば約60年後に尽きることになるが、人口の増加など時とともにエネルギー消費は増すと考えれば、4、50年後に枯れるという計算も間違いではない。この事実は、国家財政を原油輸出による収入に頼りきっているイランにとって火急の懸案事項であり、代替エネルギーの確立とともに、石油の国内消費の節約が求められている。
イランの抱える「石油問題」についてもう少し説明したい。まず、イランは世界第4位の原油輸出国でありながら、国内消費用の石油を大量に外国から輸入している。原油はたっぷりと出るが、精油施設の不足と老朽化のため、国内で精製された石油だけでは国内消費をまかなえず、わざわざ海外から国際標準価格で買い入れているのである。それをリッター10円ほどの国内価格で流通させるために、せっかくの原油収入を補助金として投入することになる。目下イラン政府の目標は「石油輸入中止」であり、そのために国内の精油施設の増加や改良とともに、国内消費を抑えるため正月明け(イラン正月3月21日)にはいよいよガソリンの配給制を始めることが決まっている。

「いつも渋滞のテヘラン首都高。ガソリン配給制は交通渋滞と大気汚染にも効果的だろう
こうした背景のもと、イランは石油の代替エネルギーとして原子力発電を求めているわけだが、いつの間にか世界では「イランは核兵器製造を目論んでいる」という印象が先走っている。 次回続く




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